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□世界で一番強く繋がっている
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今日は有名なデパートの開業記念日であるらしく冬の花火大会と称したイベントが開催される。
毎年この時期になるとデパートの1階には大きなクリスマスツリーが飾られ、恋人たちのデートスポットや待ち合わせ場所になっている。
かくいう俺も今夜は恋人とツリーの下で待ち合わせをして花火を見ようと計画していた。
このイベントの日にちを知ったとき、サンタさんからのクリスマスプレゼントじゃないかと思った。
そう、今日12月20日は俺の恋人である赤司征十郎の誕生日なのだ。

この日のために学校生活、部活の毎日にバイトを入れて目まぐるしい1ヶ月を過ごした。おかげでメールも電話もできなかったが、赤司も楽しみにしていると言ってくれたので寂しくはなかった。

久しぶりに会える!
声が聴ける!
抱きしめたい、キスしたい、それから…

いてもたってもいられなくなって携帯を開く。
待ち受け画面は隙を狙って取った赤司の横顔。不意をつかれて驚きながらも照れている顔が最高に可愛い。
携帯を閉じ幸せに浸っていると手に振動を感じた。ディスプレイに流れてきたのは勤めているバイト先だった。

「はい、お疲れさまです降旗です」
「あっ、降旗くん?お願いがあるんだけど…」

焦ったような声に悪い予感が頭をよぎる。

「実はバイトの子がひいてた風邪がスタッフにうつったみたいで…。それに急遽団体のお客様の予約が入ったから人手が足りないの。申し訳ないんだけど降旗くん今日来てくれないかな…?」

やっぱり…。
咳が出るだけと言ってマスクをつけて仕事していたバイト仲間を恨めしく思う。

「すみませんが今日は予定があって…」
「そこをなんとか!他の子にも声かけてみるし、1時間くらいでもいいからお願い!バイト代はずむから!」
「1時間ですか…」

部活が終わるのが18時半。花火が始まるのは20時からだから1時間くらいなら間に合うだろうか。

「わかりました…、行きます」
「助かるー!じゃあまたあとで」
「はい。失礼します」

通話を切り、即座に赤司の番号に繋げる。
コール音が鳴るたびに心臓が大きく動く。まさか久しぶりの電話がデートの日にバイトが入ったということを伝えるものになるとは。

「はい」

凛とした声が耳に響いた。
大好きな、赤司の声。

「もしもし赤司?」
「どうした光樹、今日の待ち合わせまでは僕を我慢するんじゃなかったのか?」

赤司は1ヶ月前の約束事を持ち出して電話の向こうでクスクスと笑っている。

「ちなみに今、新幹線に乗ったところだ。19時くらいにはそっちに着くと思う」
「う、うん。それなんだけどさ、実は今日バイトが入っちゃって…」
「バイト?今日は休むんじゃなかったのか?」
「スタッフの人が風邪ひいちゃって、人手が足りないから来てくれって頼まれたんだ。でも花火が始まる前には絶対行くから!本当に!」
「…仕方ないな。じゃあ僕は買い物をして待っているよ。必ず、遅れずに来るように」
「うん!ありがとう赤司」
「どういたしまして、光樹」

耳から携帯を離したとたん緊張感が解けていった。
そしてまずは部活をやるために部室へと走って向かった。
一刻も早く赤司に会いたい。



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