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□実にけしからん!
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矢三郎×矢一郎

「兄貴は無防備すぎる」
「何だいきなり」

突飛なことを言いながら「はぁ…」とわざとらしく溜め息をつく弟を矢一郎は怪訝な顔で見つめた。

「自分では気付いていらっしゃらないっと…」
「だから何の話だ!はっきり言え!」
「はっきり言ったところで兄貴は理解するのかねぇ…。こちとら見える度に欲や嫉妬と戦っているというのに」
「矢三郎、いい加減にしないと…」

訳の分からないことを言い続ける矢三郎に苛つき、軽く小突くつもりで近づけば太ももをぐっと掴まれた。

「なっ…!」
「ここですよ、ここ。兄貴は意識してないかもしれないけど、着物を着て大股開かないでください。見えてしまうでしょう、兄貴の太もも」
「俺の太ももが見えたからって何なんだ…」

恥ずかしいことを言われ、反抗するように睨むとさらに強い力で握られる。何がしたいんだこいつは。

「あなたは俺の恋人だ。恋人の太ももを他のやつに見られるなんて面白くないのですよ」

そういうと太ももを掴んでいた手は着物の左右を割ってするっと中に入ってきた。さっきまで圧迫されていた部分をつっ…と撫でられ身体が一気に熱くなる。

「っあ…!」
「あれ、感じた?」
「うるさっ…んっ…」

すでに敏感になっている太ももの裏を手のひらで撫でられ腰がずり落ち、立つのも辛くなってきた。いやらしく指先を這わせながら矢三郎は股の間に脚を割り入れ、支えるような体勢をつくる。
壁際に移動し、矢一郎の背中を壁に預けるとこのままいたしてしまおうかと顔を近づけた。

「お前はっ…こういうことばっかり覚えやがって…」
「兄貴が知らなすぎなんですよ。ただでさえ着物なんて周りを誘惑するようなもの着てるんですから少しは自覚してください。どれだけ俺が我慢してると思ってるの」
「周りを誘惑…?別に露出高いわけじゃないだろ…」
「あのですね、隠れているところからのぞく少しの露出というものが欲を掻き立てるということを覚えておいてください。着物なんて帯をほどけば脱いだも同然ですからね。兄貴、簡単に脱がされますよ」

さすがに理解しただろうと矢一郎の顔を窺うと期待は外れた。矢一郎は首を傾げている。

(全く、困った兄貴だ…)

「ああーっもう!要するに兄貴は俺以外に太ももを見せなければいいんです。脚開かないでください…って言ってもどうせ分かってないんだろうな…はぁ…」
「…?」

未だに首を傾げたままの矢一郎の太ももに顔を近づけ強く吸った。そのまま何ヶ所にも同じ様に赤い印を散らしていく。

「な、何やってんだ!離せばかっ…やっ…だ」
「こうすれば兄貴も脚開けなくなるでしょう!」

矢三郎の頭を鷲掴みにして必死に顔を離そうとするが太ももを舐めるざらざらとした舌の感触に耐えきれず声が漏れる。
ちゅっちゅっと音が響き再び身体は熱に犯された。

「ふっ…うん…」
「兄貴…」

矢三郎の顔が近づいてきたのでぎゅっと目を閉じる。キスされる…!このまま流されていいのか…!?そう思った瞬間、視界が変わった。

「あ、兄貴!?何でここで戻るんですかぁ!」

どうやら意識せずに狸に戻ったらしい。

「まぁ、印はたくさん付けたしいいか…。兄貴、俺が言ったことゆめゆめお忘れなきよう…」



次の日の朝。
昨日矢三郎に付けられたたくさんの赤い所有印に溜め息をつき、初めて洋服を身に着けようとする矢一郎であった。


おわり



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