uta☆pri

□大切な人
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「さぁ、今日のゲストはSTARISHの一十木音也くんです!」
「こんにちはー!」

トキヤは、音也が昼番組の生放送にゲストとして出演すると聞いて、午前のジムでのトレーニングを早目に終え、部屋に戻ってTVを見ていた。前日の夜、音也はトキヤを相手に一生懸命受け答えの練習をしていた。
「えぇ…(メモを見て)、では、最近のマイブームは?」
「マイブーム? うーん…」
「音也、“うーん”は余計ですよ」
「あ、そっか。生ではなるべく簡潔に答えないとだったよね」
トキヤは音也のために作ってあげた質問の一覧を見つめたまま、ふっと笑う。
「そうです。なので、すぐに答えられるよう頭を回転させておかないと…って、音也?」
いつのまにか音也はトキヤの後ろに回り、ソファーの背もたれ越しにぎゅっと抱きしめてきた。
「ありがと、トキヤ! 質問いろいろ考えてくれて…嬉しいよ、俺」
「…あなたがしどろもどろで終わったら、私も何を言われるかわかりませんしね」
ふっと笑ってトキヤがメモを置き、手を音也の頭のほうへ伸ばす。ポンポン、と撫でてやると音也はへへヘッと笑って、トキヤの頬に自分の頬を摺り寄せた。そしてすっくと立ち上がる。
「もっとトキヤとこうしてたいけど…今は、我慢する!で、明日頑張れたらいーっぱい、くっつこうね!」
「…なっ、あなたはいつもそんな恥ずかしいことを…」
そう言って視線を彷徨わせるトキヤ。明らかに照れているのが何とも可愛くて、音也は抱きしめたくなるのを押さえるのに必死だった。

そして現在。生本番中の音也は、無難に、いや実にそつなく要求や質問をこなしていた。
「ギターがお得意な音也くんに、即興で1曲お願いしたいんですが…」
「はい、じゃあ自分で最初に作った曲を!」
♪♪♪〜
「次にファンの皆さんからの質問に答えていただきましょう!“マイブームは何ですか?”」
いきなり、トキヤが予習させたのと同じ質問が飛び出す。
「マイブームですか。実は最近朝のジョギングにはまってて。毎朝好きな音楽聴きながら、寮の敷地内を走ってるんですよ」
(確かに最近音也は、ストイックに体を鍛えていますね…プロ意識が強くなってきたんでしょうか。とても素晴らしいことです)
トキヤは画面を見つめながら、そんなことを思い、微笑む。ホカホカとあたたかくて頑張り屋な音也をいつも眩しく感じるし、最近は頼もしくも思っている自分がいることが、何だか不思議だった。
(最初は騒がしいだけのルームメイトだと思っていたのに…今やいなくては困る存在になるなんて…)
ちょっと苦笑しつつ意識を画面に戻すと、ちょうど最後の質問にさしかかっていた。
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