uta☆pri

□マスカレイドミラージュ終演後・嶺二と藍の場合
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「ち、ちょっと、レイジ」
藍は思わず目の前の嶺二の体を押し返していた。衣装のはだけた嶺二の肌にじかにふれると、拒んでいるのにも関わらず藍の体の奥に熱が点った。
「アイアイだって、こうしたいんじゃないの…?」
藍が全力で押していないことに気付いている嶺二は、その手首をぎゅっと握り、逆に壁へと押し付けた。
「だっ…て、ここ…シャワー室…だよ?」
「だから?」
「那月が、来るかもしれない…でしょっ…!」
首筋への愛撫に意識が遠のきそうになりながら、藍が嶺二を睨みつける。
「別に僕は来たって構わない、けど?」
さして関心がないとでもいったふうに、嶺二は藍の衣装に手をかける。
シルクのブラウスのリボンタイを解き、白い肌が露わになると、嶺二はその鎖骨に軽く歯を立てた。
「んっっ…!」
藍はなるべく声を出さないようにしているのか、グッと歯を噛みしめている。
「れっ、レイジ…やめ…」
「だーいじょうぶ。那っつんなら翔たんに今日の初日の報告したいからって、すぐ帰るって言ってたし」
(そうだったんだ…僕としたことがそんなこともリサーチ出来てないなんて…やっぱり初日で無駄に高揚してた、のかも)
「……だからって…っく、こんなことしてる、暇、ない…」
「……やだ」
「…えっ?」
珍しく嶺二が低い声で囁くので、藍はビックリして嶺二を見た。
「あんなに熱い舞台のあとで、まだ体じゅうが熱くて…隣には…藍がいて…」
「……!」
藍、と呼ぶのはふたりで肌を重ねているときだけなので、藍はまだそう呼ばれることに慣れない。
(何でこう、ふだんとギャップがあり過ぎるわけ…狡いよ、レイジは)
「それに目の前で、藍がヒロインちゃんにキスするのまで見せられて…そんなまま、別々の家に帰れると思う?」
「……」
そんなふうに問われたら、藍は何も答えることが出来ない。舞台が終わるまで、互いの家に行くのはやめようと、稽古に入った日に提案したのは藍だったから。
「やっぱり、狡い」
「狡い?」
「テキトーに行動してるように見えて、突然核心をついてくる。しかもそれは過去の僕の発言や行動をしっかりベースにしてるから、言い逃れ出来ない…」
「つまり、それはいい、ってことだよね?」
「…んもう! だとしたらすぐに帰るよ」
「えぇ?」
「……レイジの家にね」
ふてくされたように、でもどこか恥ずかしそうに藍が言う。
「……っ、アイアイ!」
嶺二が藍をぎゅっと抱きしめた。
(自分で決めたことを覆すのは本意じゃないけど…ここで押し切られるのもイヤだし…何よりここじゃレイジも自分も…気持ちの昂りを最後まで収めきれない…だからここは、レイジのせいにして、レイジの家へ行くのが最善…)
藍はそんなことを思いながら、襟元を直した。
「…それにキスはたかがおでこでしょ。…自分だって那月にあんなにハグされてたくせに…」
「ん?」
「何でもない。5分で支度して。明日も…あるんだからね」
「はいっ!寿嶺二、全力で支度しまっす!」
そんな嶺二を呆れて見つめながら、明日は寝不足時のメンテナンスをしなきゃね、と藍は苦笑するのだった。


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