uta☆pri

□call my name
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ある日の舞台稽古中。
♪〜
携帯がメールの着信を告げる。
〈From 神宮寺 Title 今日〉
真斗はそれを見ただけでトクン、と胸が高鳴る。
なぜなら、今日は2週間ぶりに時間がとれる日。
しかも翌日は2人共オフだったから。
が、書いてあった内容はそんな真斗の気持ちを一気に暗く沈ませた。
〈聖川、悪い。急に共演者との食事会が入った〉
「……共演者との食事会……か」
共演者というのは、今レンが出演しているドラマの出演者たち、ということだろう。
内容は、複数のカップルのストーリーが同時進行してゆくラブコメディーで、
レンは売り出し中のアイドル、川瀬未実と付き合っているという設定。
「当然、川瀬という女性も…来るのだろうな…」
仕事であることも、レンがフェミニストであることも理解している。
それと同時に、自分がそのことに対して複雑な思いを抱いていることも、理解していた。
さらに“聖川”という呼び名も真斗を鬱屈とした気分にさせる。
付き合い始めてからレンは、ふたりのとき自分を“真斗”と呼んでいる。
その響きがとても甘くて、真斗は好きだった。
だから、聖川と書かれているときは仕事モード、ということになるのだろうが、
休日の話なのにあえてそう書くことに、言いようのない寂しさが生まれる。
「…………いや、やめだ。今は自分の仕事を全うするのみだ」
真斗はそう呟いて、電源を落とすと、携帯をしまった。

帰宅し、ひとりで食事をし、風呂に入り、翌日の準備をし、本を読む。
いつもの自分が普通にしていることなのに、何だか空虚さが消せなくて、真斗はふう、とため息をつく。
「茶でも…飲むとするか」
そのあとは就寝の準備でも、と思っていたときだった。

ピンポン…

インターフォンが鳴った。
「……!」
慌ててモニターを見ると、そこには艶っぽく微笑むレンがいた。
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