艦これ二次創作小説〜海の底から〜
□崩壊の予兆
1ページ/8ページ
「……」
隙間から見る。
目が悪くなければ、隙間からわかる人数は十五くらい。服装から判断するに、空母が二人、戦艦は一人、あとは駆逐艦とか軽巡だと思う。
背中がくすぐったい。
金剛さんが指でつついていた。
「何してるの! みんな待ってるんだヨ!」
「いや、でも」
たまに、こう、覗きたくなるじゃん。
と思ってる間に、襖が独りでにスパンと開いた。
いや、開けられた。
「ははー」
襖を開けたのは、髪型はポニーテール、上はセーラー服で下はハーフパンツという、明るそうな人だった。軽巡か駆逐艦かな。
「残る一人、北上さんですね?」
有名人だった。
そんなことないか。
どうやら、この宴会場にいる艦娘は既にアタシを知っているらしい。同調後にいなかったとかでだろうなぁ。
「ども、恐縮です! 重巡の青葉です! 呉からの転属です!」
「あ、はぁ。新任の北上です」
やかましそうだ。
「そちらは金剛さんですね?」
「Yes!」
「噂はかねがね、それはもうかねがね。青葉が転属前に何度かお聞きします! 初出撃でフラグシップル級を撃沈させただけじゃなく、その任務は無傷で完遂させたとか。そ
して仲間の駆逐艦にも傷は追わせなかったとか! 青葉はそんなこと出来ませんからねぇ……」
やっぱりやかましかった。
「あのさぁ青葉さん」
「嫌だなぁ北上さん、青葉には敬語は不要ですよ〜」
「うん、わかった、わかったから、宴会場に入らせて」
「これはこれは恐縮です」
絶対に違う。
その態度からは「恐縮」は感じられない。
ともあれ、宴会場に入ることは出来た。
改めて見ると、青葉を含めてここにいる艦娘は十五人。アタシは除く。
さっきのやりとりが原因なのか、全員の視線がアタシに集中していて、痛い。
ここにいる艦娘はほぼ全員が初対面で、新任もそこそこらしい。
一番無力なのはアタシだった。