艦これ二次創作小説〜海の底から〜
□終わりへ向かう世界
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初出撃は中止になった。
さっきまで相手していた深海棲艦は、作戦内で沈める対象だったらしくその必要はなくなっていた。
合流する横須賀の艦隊と、転属予定の横須賀の艦隊は、完全に別動隊になってしまい、今回の様な結果になった。合流する横須賀の艦隊は二つあり、主力の第一艦隊は呉鎮守府に遠征予定だったと聞いた。
ここまでは大井っちからの伝達。
そしてここからも大井っちの伝達。
この佐世保からも何人か転属が決まっていて、雷、電、青葉、熊野がまず呉に一時移るらしい。二、三日したら今度は横須賀に移ることになっていた。
雷と電は久しぶりに、暁と響に会うとか。姉妹だからたまには会話も交わしたい、とのこと。
これで、佐世保の戦力は大いに増強が成される。
戦艦は金剛、長門、扶桑、山城。
空母は加賀、飛龍。
重巡は最上。
軽巡は北上、大井、川内。
駆逐艦は漣、時雨、島風。
何となく、不足がある気がしなくもなかった。
帰投してからは、大井っちはアタシに付きっきりだ。
すごい助かる。
「大変だった?」
大変。
それを聞いて、最後に戦った深海棲艦を思い出す。イ級やチ級は長門さんたち戦艦が次々に沈めるし
、アタシが活躍する場面はこれと言ってなかった。
アタシはただ、水柱と、沈む深海棲艦を呆然と見ているだけだった。
「大井っちにも見せたかったなぁ。アタシの発射した魚雷で深海棲艦が沈むトコ」
「初めての戦闘なのに奮闘したらしいですね……」
「……ま、まぁ、ね」
奮闘と言えば間違いではない。かも。
お昼ご飯が近くなっていたのもあって、空腹とも戦っていたから、集中力はあまりなかったのは事実。今は午後三時でお昼ご飯は済ませてあるから大丈夫。
あの戦闘の被害が少なかったのはある意味奇跡か。
「青葉は?」
「青葉さん? 青葉さんは熊野さんと外出中ですよ。お夕飯の材料の買い出しを、間宮さんと一緒に……」
「な、なるほど」
艦娘は外出は不可。アタシはそう思い込んでいた。
こうして戦う以上、機密保持は義務だと思っている。だからそんなことはまず許されない。
どうやら違うらしい。
「でも、どうして青葉さんと?」
「聞きたかったことが……いやまぁ、あんなのより大井っちと話せるほうが嬉しいから、いいよ」
変な方向になりそうだし。
「……外出?」
「あ」
疑問を口にすると、大井っちは思い出し
た様に答えた。
それから二週間が経つ。
朝ご飯、お昼ご飯、お夕飯を、毎日大井っちと一緒に食べる様になって、親睦はかなり深まっていた気がする。
親友になった気分だ。
まだ二週間だけど。
「さっき初めて知ったんですよ。北上さん、私と外出しませんか? 歓迎会のこともありますから」
「外出……」
突然何を。
と言うか、歓迎会のこと?
アタシは何かした覚えはないんだけどなぁ。
それに突然「外出しよう」だなんて言われても、特に行きたい場所はない。
「外出なんて出来るの?」
「みたいです!」
大井っちは鼻息を荒くしている。
犬みたいだ。
「そこに細かい規定はなくて、申請さえすればいいんです! って、青葉さんが言ってました。戦ってばかりだと狂うとか……」
なるほど。
確かにそれなら艦娘を縛り付けることにはならない。
鎮守府は設備は満足いくくらいには充実しているけれど、やっぱり外には外の良さがある。
この世界では娯楽要素がかなり少ない。と言っても枯渇するほどではない。だけれど、その補いはまだまだ追い付いていなかった。
鎮守府を出ると街があり、家電量販店に始まり、デパートにスーパー、コンビニがそれなりにあったりする。今でこそ数はかなり少ないけど、ゲームセンターもある。
艦娘はたまにそういうものを楽しみたくなるとかならないとか。
「と、言う訳で、私たちも行きましょう! 少なくとも佐世保鎮守府の近くに深海棲艦はいませんし」
「行くって言っても……」
何かしたいことはない。給料日はまだ先だし、外出するにしても出来ることは限られてしまう。
ウィンドウショッピングかな?
「提督さんが五万円もくれましたし!」
太っ腹。
「……てか、大井っちはアタシとでいいの?」
「いいんですよ?」
無垢な目で、そう言われる。
まだ会って日は浅いから、大井っちはかなりの無警戒と思える。
「まぁ、大井っちが……いいって言うなら」
断る理由はないし。
悪い気もしないし。