銀魂 長編
□第壱話
1ページ/7ページ
眠りから覚醒した瑠璃の目に映るのは、いつもの天井だった。
少しの間ぼーっとそれを眺め、ゆっくりと上体を起こす。寝乱れた着物を正し、夢の内容がはっきりしているうちに整理した。
感情がなかったころ、"人間"じゃなかったころの記憶だ。何故そんな夢を見たのかは分からない。
考えてみると、もう4年も前のことだ。しかし、懐かしさは感じない。
それはきっと、ここでの生活にまだ慣れていない証拠だろう。
副長に連れられ、ここにやって来てからもう4ヶ月。半年にも近い時間が経ったのに…
そう思いながら、瑠璃は布団から出て、箪笥に膝立ちで近づいた。
時刻は午前5時。空はまだ薄暗く、太陽はあまり出ていない。早朝の屯所は静かだ。
真選組の一日が始まるまでまだ時間があるので、好んで無駄な早起きをする者はいないのである。
しかし、瑠璃が早起きをするのには理由があった。
剣道着に着替えた瑠璃は竹刀を取り、こっそりと庭に出た。
辺りに障害物がないのを確認してから、竹刀を上段に構える。そのまま下に振り下ろし、上げては下ろしを繰り返す。
心のなかでカウントし、ただひたすら竹刀を振った。
この朝稽古は土方と初めて出会ったあの日から始めたものだ。始めてから、早いもので4年の月日が流れていた。
毎朝100回ずつ素振りをして、終われば型の復習。そしてそれすらも終われば、イメージトレーニングで実戦に使えそうな動きを磨く。
4年間、ずっと続けてきていることだ。
この朝稽古が終われば、今度は昼過ぎに隊士全員で行われる全体稽古が待っている。そちらも、今のところは皆勤だ。
筋肉痛が酷い時もあった、挫けそうな時もあった。しかし、それでも続けてこられたのは1つの願いを叶えるためだった。
強くなりたい。
ただ、そのために今日も竹刀を振り続ける。