REBORN! 長編

□第7話
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「花ちゃんは、京子ちゃんが自らの意思で黒澤さんを傷つけたと思いますか?」


その問いかけに花は戸惑った。動揺する花を見て、ルリはわざとらしく冷たさを感じるほど深いため息をついた。


花を見る目が厳しい。花は蛇に睨まれた蛙がどんな気持ちか、初めて分かったような気がした。


だが、彼女は睨まれて身を縮めるような性格ではなかった。


「普通なら、そんなことしないと思う。でも、あんだけ疑われても仕方ない状況ができちゃうと、疑うのは当然じゃない?友達だからこそ、はっきりさせたいの」


ルリを睨み返し、はっきりと意見を口にする。このさっぱりとしている性格は、ルリが彼女を好ましく思う要因の1つだ。


だが、今の彼女の言葉は好ましくなかった。ルリは再び、堅い声で問いかけた。


「花ちゃんは京子ちゃんと固い絆で結ばれ、どんな性格か熟知しているはず。それなら、疑うはずないでしょう?」


お互いが親友だと認めあっていて、よく同じ時間を過ごしている。二人はお互いを理解していて、日々を過ごすなかで信頼を築いてきた。


その信頼は、とても頑丈なものであるはず。だが、あの出来事はそれを揺らがせてしまうほど大きな衝撃だと花は言う。


それが、ルリには理解できない。


「そして、もうひとつ聞きます」


ルリは眉ひとつ動かさず、厳粛に言った。


もし本当に傷つけていたなら、見損ないますかと。


すると、花は息を飲んだ。そして、少し考えるそぶりを見せたあと、小さく頷いた。


「……だって、仕方ないでしょ。もし本当に切ったなら、犯罪者みたいなもんじゃん。まともじゃないって思うよ……」


ルリは横目で京子を見た。京子は花の言葉に傷ついたのか、顔を伏せていた。


ルリはそっと視線を花に戻し、質問を重ねる。


「それは……どんな理由や状況であってもですか?」


「当たり前じゃん!そもそも、学校に刃物持ってきてる時点でやばいし」


どんな理由や状況であっても、切った人が悪い。それが花の意見という。


では、花の意見で考えれば、京子は悪だ。花は、京子を見損なうというわけだ。


真実を知ったその時から、花と京子の友情は壊れてしまう。親友という存在を失うことになってしまう。


それは、きっと辛いことだ。


「……花ちゃんの考えは、よく分かりました」


ルリは一度深く息を吸い込んで、覚悟を決めた。


花に、本当のことを告げる。


「花ちゃんの聞いたことは本当です。あの日、京子ちゃんはナイフで黒澤さんを傷つけました。私は切りつけようとする現場を見たので、間違いありません」


それを言った瞬間、花は表情を凍りつかせた。京子を見る目は、犯罪者を見る怯えた目に変わった。


しかし、ルリは淡々と続けた。


「現場にいたのは京子ちゃんと黒澤さんだけ。私は第一発見者です。黒澤さんが保健室に向かうのを見届けたあと、私たちは恭さんに呼ばれて事の詳細を説明していたので、教室に帰りませんでした」


「つまり、京子ちゃんは花ちゃんにとって"まともじゃない人"です。この事を聞いて、どうですか?」


「京子ちゃんのこと、もう友達と思えませんか??」
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