REBORN! 長編
□第2話
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黒澤ミサが転校してきて1週間、クラスはほぼ二つに割れていた。
「ツナ君たち、楽しそうだね」
ミサと話す綱吉たちを見て、京子は寂しそうに笑った。ルリは「そうですね」と返して、京子から目を反らす。
京子とルリは、クラスから完全に孤立したと言ってもいいだろう。
いつから、というのは明確には分からない。ただ、いつのまにかいつも一緒だった友達は離れていった。
みんな、転校生と楽しげに話す。それはいいことのはずだ。クラスに馴染んでいる証拠なのだから。
しかし、何故か心は孤独を訴えた。自分も彼女たちの輪に入ればいいだけの話かもしれないが、その気にはなれなかった。
「転校生というのは、最初のうちはちやほやされるものです。他校のことやその人のことをみんな知りたがりますから」
静かに京子を励ますルリは、不安なように見えない。京子はルリのことを見つめ、そして尋ねた。
「ルリちゃん、寂しくないの?」
ルリは面食らったように見えたが、困ったように笑った。京子とばっちり目を合わせ、問いかける。
「寂しくないわけではないですけど……何と言うんでしょうね。私は、」
ルリが何か言いかけた時、突然女の声が教室中に響いた。ミサの声だ。
「あっれー?私の携帯、どこ行ったのかなー?」
わざとらしい大きな声を出し、彼女は机の中を覗き込んでいた。ルリは声につられ、京子越しに彼女を見る。
「携帯ないの?ミサちゃん」
近くにいたクラスメイトの女子が声をかけた。ミサは次に鞄の中を探り、彼女に答えた。
「何かが無くなるの、二回目なんだよね〜。どこかなー?」
何人かのクラスメイトが「えっ、二回目!?」と声を張り上げた。ミサは困ったように頷き、顎に手を当てた。
「この前はポーチ。まあ、違うロッカーに入れちゃってたみたいで、すぐ見つかったんだけど」
でも、今度のは見当もつかない。そんな印象を受ける語り口だ。
声を掛け合い、ほぼ全てのクラスメイトが捜索を始める。すると、ざわざわと教室が騒がしくなった。
同時に、ひそひそ話があちこちで交わされ始めた。
「ね、もしかして…」
「ああ、もしかすると…」
何人かがチラチラと京子たちを見る。京子は隣のルリの腕をとんとん とつつき、声のボリュームを落として話しかけた。
「ルリちゃん、すごく見られてるけど…疑われてるのかな?」
不安げな京子を横目で見たが、ルリの返事は単純で冷静だった。
「まさか。疑われることなんてしていないでしょう?」
そう言ってから、ルリは鞄から携帯を取り出した。そして、ボタンを押し始める。
ルリちゃんはガラケーなんだ、と密かに心のなかで呟いた。なんとなく、最新機器を使いこなす様を想像していただけに意外だった。
黒い携帯電話を見つめていると、ルリが少しだけこちらを見た。しかし、また画面に目を向ける。
「こちらの方が使いやすいんです。新しい物に切り替えるタイミングも掴めないですし」
まるで心を読まれたような返事に、京子は「えっ!?」と驚いた。それにクスリと笑いながら、ルリは携帯を操作する。