REBORN! 長編
□第6話
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話が一段落したのは、瓜二つな二人が話し出して数十分が経過した頃だった。
時計を見ようとしたルカが、たまたま京子たちを視界に入れ、ばつの悪そうな顔をする。
「悪い。お前らがいんのに話こんじまった」
その言葉にルリもハッとしたようで、京子たちを見て申し訳なさそうに苦笑いした。
「1つのことにしか集中できなくて……。すみません、これはあとにしますね」
紙とペンを一ヶ所に纏めると、ルリもルカ同様に時計を見上げた。
時間割を頭に浮かべてみる。学校は今、掃除の時間だ。
「あと2時間したら、並中に行きましょうか。京子ちゃん」
あと2時間。
何でそんな指定をするの、そもそも学校に何か用があったっけ?
そう言い出しそうな顔を京子はしていた。すると、ポンと手を叩いたルカが、疑問を解決する言葉を発した。
「あ、そっか。お前らの荷物学校だもんな」
すっかり忘れていた京子は、あっと小さく呟いた。すっきりしたような面持ちになった京子に、ルリがにっこり笑いかける。
「色々あって、忘れちゃいますよね。鞄よりも大きな心配事が今、私たちの日常に起こってるんですから」
ルリの言う通り、誰もがみんな不安を抱えていた。
あの何でもないようなことでも楽しい日々は帰ってくるのか。
あの楽しい時間を共有した大切な人たちと再び仲良くできるのか。
それらの不安が心の中で渦を巻いて、楽観的な思考や表情を底に沈めていった。
それはルリとて一緒。しかし、だからといって落ち込んだままでいるルリではなかった。
凍えた心を暖めるような、闇に光を差すような、そんな笑顔をルリは持っていた。
「大丈夫です。闇と光は隣あわせ、闇の向こうには光が必ずあるのですから」
そう言った言葉はただの慰めか本心か……分かる術はない。しかし、不思議なもので、誰もがその言葉に安堵した。
くすっと、自然と綻ぶ3つの口元。唯一被害を受けていないルカは、その様子を他人事として見ていた。
興味がないわけではないが、嬉々として聞くような話でもない。余計な口を挟むのも野暮な気がして、結果黙って見守るのがベストだっただけだ。
頬杖をついて様子を見守っていたルカを見て、ルリは問いかけた。
「ねぇ、あの人たちはどう?来てくれるの?」
一瞬話が分からず首を傾げるが、すぐに納得し、ルカは顎に手を当て、斜め上を見た。
「来てくれるってよ。えーと…確か今あそこだから……まあ、近いうちに来るな」
再度指で計算をしてから、ルカは確信を持って頷いた。
「明日か明後日……くらいか?さっき日本行きの飛行機に乗ったらしい」
ルリは頷きと笑顔で礼を言い、京子たちを見回すと、何について話していたかを語った。
「協力者は必要かと思って、色んな分野に精通している人たちに来てもらうことにしたんです」
そういうとルリは少しだけ言葉につまった。悩むような仕草のあと、笑顔を浮かべる。
「イタリアの暗殺組織なんですけど、気にしないでくださいね!」
しかし、それは聞いた者たちを凍りつかせた。顔を引きつらせ、彼女たちはルリに詰め寄る。
「そんな近所の人を紹介するような軽い感じじゃないだろ!!馬鹿かお前、"暗殺者"の言葉の重みを分かってねぇな!?」
「暗殺者ってあれですか、あの、大統領をゴー トゥー ヘル したような人ですか!?」
「私たちが会って大丈夫なの?イタリア語話せないけど、コミュニケーション取れるかな?」
ルリの軽い物言いに呆れたのはルカ、暗殺者に怯えているのはハル、妙な所を心配しているのが京子だ。
頭は悪くはないのに時々言葉のチョイスがおかしいのは、きっとルリがマフィアの世界に馴染んでいるから。困った顔をしながら、ルリは仕切り直す。
「未来で皆さん会ってますよ。覚えてません?」
その言葉で、ハルはある事を思い出した。
「やっぱりデストロイな人たちじゃないですか〜!」
そう言ったハルの頭のなかでは、未来で桔梗の頭を撃ち抜いた黒髪の男が鮮明に映し出されていた。
指で銃の形を作り、打ち抜く真似をするハルを見てなんとなく分かってしまい、ルリとルカは顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。