銀魂 長編

□第四話
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雨が降り続く外を一瞥し、瑠璃はまた書類に取りかかった。


沖田総悟、その名前が出てくる書類ばかりが机の上に積み上げられている。


沖田が壊した建物などの請求書の分別など、瑠璃のデスクワークのほとんどは沖田関連だ。


土方に渡す分と近藤に渡す分を仕分けたあと、それを渡しに行くことになっている。


不真面目な上司を持つと部下は苦労するもので、瑠璃は先ほどからずっと机の前から離れられなかった。


雨のせいで洗濯物が干せないのではないかと少しばかり心配なので、それも合わせて心が重い。


夜には晴れてくれたら……と天気の回復を願うことしかできず、瑠璃はため息をついた。


BGMとなっている雨の音に耳を傾け、再び分別に取りかかる。


しばらくすると、雨の音にまた音が混ざった。縁側をダッシュしているような足音だ。


特に気にせずにいたが、足音は部屋の前で止まった。人影が2つ現れる。


「邪魔するぞ、瑠璃」


「よー、相変わらず雨に劣らずしけた面してんなー」


現れたのは土方と沖田だ。瑠璃は筆を置き、体の向きを二人の方に向けた。


「どうしました? あ……書類なら、今分別中です。あともう少し、待ってくださいね」


また再開させようとする瑠璃を土方が呼び止める。よく見ると、二人とも私服だ。


「……お出かけですか?」


「いや、それに近いが……そんな軽い感じではねぇな。とりあえず、俺らのことはいい。お前にいくつか頼みが、」


土方が何かを言いかけた時、その横で沖田が被せるように言葉を放った。


「近藤さんの略奪愛の手伝いに行くんでい。だから、お前も殴り込みに着いて来いって言いてぇんだってよ」


その言葉に驚いたのは瑠璃だけでなく、土方もだ。何か言いたげに口を開くが、それは沖田によって押さえられる。


瑠璃は不思議そうに瞬きをして、一度机の上の書類を見た。


「……今日は仕事がありますし、遠慮します。それに、人の恋路の邪魔は……」


「いーから着いてこいよ、それでも忠犬か。命令にはワンワン尻尾振って着いてくりゃいいんだよ」


沖田の言葉に瑠璃の中の何かが刺激され、むっと眉を寄せた。瑠璃は立ち上がり、隊服のジャケットを脱いだ。


「副長の命令なら、私行く。……副長、もう少し待ってください」


「いや、違っ!……つうかお前、何してんだ?」


瑠璃はスカーフをほどき、シャツを第2ボタンまで外していた。続いて第3ボタンを外そうと手をかけている。


瑠璃は首を斜めに傾ける。声は疑問系であるが、顔は平然とした様子で答える。


「着替えます」


「なら戸を閉めろ!」


そう叫んで、土方は力任せに障子を閉めた。中にいる瑠璃は特に気にしていない様子で「はい」と答えた。


以前からそうなのだが、彼女は羞恥心というものが薄い。肌を見せることへの抵抗感はほぼ皆無だ。


危機感が無さすぎる……と、心の中で呟き、土方は重いため息を着いていた。
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