REBORN! 長編

□第6話
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学校が終わる時間になるまでは自由に過ごすということになり、穏やかな時間になった。


トランプで遊んだり、最近あった楽しいことを話したり……ルカと初めて会う京子とハルなんかは質問したりしていた。


楽しい時間を過ごすと時の流れは速く感じるもので、時計の針はいつの間にか予定の時間を指していた。時計を一瞥すると、ルリは


「さて、そろそろ行きましょうか」


と言って立ち上がる。折れ曲がったスカートの裾を直し、京子を見る。


京子もルリに続き、二人はハルたちに手を振って玄関へ向かった。 玄関に並ぶ靴を見て、ルリは少し嬉しそうに笑った。


「いつも、ふと思うんですけど……友達って、いいですね」


その言葉に深い意味があるのかは分からないが、京子も同じ意見だ。うん、と頷いて自分の靴に足を入れた。


玄関を開け、道に出る。そのまま右に曲がり、並盛中学校へと続く道を歩いた。


「なんだか不思議ですよね。この時間に学校に向かうなんて」


「うん、そうだね。いつもなら、この時間は家に帰ってるはずだもん」


ふふっ、と二人は笑った。そのまま足を進めていくと、ルリは急にため息をついた。


「荷物を持って帰る前に、また応接室に行かないといけませんね。…ああ、ちょっと怖いです」


肩を落としたルリを見て、京子は意外そうに首を傾げた。


雲雀を前にして怯えることなく発言したり、笑顔を見せたりする人は少ない。


しかし、彼女は尊敬と畏怖のどちらでも恐れられている雲雀恭弥を前にしてもいとも簡単にそれをやってみせる。


それは仲がいいからだと京子は思っていた。しかし、仲がいいのではないかと問えば、ルリは曖昧な表情を見せる。


「恭さんに言ったらトンファーで殴られますよ……」


あの人は群れるのが嫌いですから、と言って、ルリは仲良しを完全に否定するように手を横にひらひら振った。


本人の前では絶対に言ってはいけないと釘を刺され、京子は頷いた。友達が鉄の棒に殴られないためにも、絶対に言えない。


「でも、"恭さん"って言ってるし……雲雀さんもルリちゃんに優しいよね?」


「恭さんは害がない女子にはだいたい優しいですよ?」


そして雲雀のことを"恭さん"と呼ぶ理由については、出会ってすぐの時、名前を聞く前に草壁がそう呼んだからと言った。


もしその時に「恭さん」と呼んだ草壁がおらず、綱吉たちのように「雲雀さん」と呼ぶ人がいたのなら、変わっていたかもしれないとも。


今まで聞いたことがなかった呼び方のルーツを聞き、京子は興味深げに「へぇ〜」と言って頷いた。


今まで仲がいいと思っていた京子としては何となく残念だ。


「そうなんだね。私、てっきり……」


恐れることなく雲雀に近づき、笑顔を向けるルリ。いったい何度その光景を見たか分からない。


京子の中で燻っていた あること を、ついに投げ掛ける時が来た。


「雲雀さんのこと、好きなんだと思ってた」


ルリは、目を丸くする。パチパチと数回瞬きをして、固まってしまった。


人は予想外のことには弱いもので、ルリは京子の言葉をただ繰り返した。


「恭さんが、好き……」


「うん。ずっと前から気になってたけど、聞けなかったの」


京子は楽しそうに笑い、ルリの顔を見つめた。しかし、ルリは戸惑ったような表情を崩さなかった。


好きという言葉を何度も繰り返し、顎に手を当てた。かなり戸惑っていることは明白だ。


しかし、そのあと急にぷっと吹き出した。ルリは笑い、片手を横に振る。


「ないない、ないです、絶対。恭さんは確かにかっこいいお顔してるし、強いし、普段はいい人ですけど、だからこそないです」


憧れで止まっちゃいます、と笑ったルリは、きっと自分が雲雀に恋をした想像をしたのだろう。


こんなにも笑うことなのかと思いながら、京子はつられて笑った。
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