REBORN! 長編
□第7話
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嫌な目を向けられながら辿り着いた教室は、無人に近かった。自分たち以外にいるのはたった三人だけであり、広い教室がもっと広く見える。
その三人が、それぞれのタイミングでこちらを見た。そして、その目は驚きに染まっていた。
そのうちの1人、黒川 花はこちらに駆け寄ってきた。鞄を置くことも許されず、ルリと京子は腕を引っ張られた。
「花っ!どこ行くの!?」
斜めから花の顔を見たルリは、彼女が切羽詰まっているように見えた。
京子の言葉に何も返せないほど、心を乱していることが読み取れる。
少し走って、二人は教室から離れた女子トイレに押し込まれる。花も入ると、個室に誰もいないことを確認してから扉を閉め、ドアに背中を預けた。
ドアの曇りガラスには花の背中が見えるはずだ。大抵の人は、遠慮してドアを開かない。
鍵をかけない密室だ。3人の会話を邪魔するものはいない。
「なんですか、急に……」
警戒心を露にしたルリの言葉に、花は眉を寄せた。分かってるくせに、と呟いた声音は少し不機嫌そうだった。
「昨日のあれ……ほんとはどうなの?」
何を、とは言っていないが、二人にははっきりと伝わった。
教室に来るまでにすれ違った女子とは違う。花は傍観者であることを望まなかった。
噂話を鵜呑みにして怪訝な顔をすることはなく、真実を知ろうとしてくれている。
遠巻きに見学することはせず、踏み込んできてくれた。それは、とてもありがたいことだ。
しかし、友達としては、少し不十分なように思えた。
「……花は、どう思ってるの?」
京子は目を伏せ、切ない声音で呟いた。
聞き返されるのは予想外だったのか、花は息を詰まらせる。京子と同じように目を伏せ、言葉に悩んでいた。
ルリは黙って二人の言葉を待つ。京子と花を交互に見て、どうなるかを見守っていた。
やがて、花が先に答えた。その表情は苦痛に満ちていて、今にも泣き出しそうだ。
「あんたが人を傷つけるはずないって知ってるし、信じたいよ。けど……ミサが嘘をついてるかって言われたら、そっちも分かんない」
花は、二人が帰ってからのことを教えてくれた。
あのあと、保健室から帰ってきたミサは、はっきりと「京子に切られた」と言ったという。
もちろん、誰もすぐには信じなかった。聞いてすぐは、聞き流すような反応だったらしい。
まさか、そんなわけない、と誰もが心の中で言っていたはずだった。
しかし、昼休みが終わって授業が始まっても、ルリと京子は教室に帰ってこなかった。
これが、半信半疑だったクラスメイトの気持ちを完全に疑いに変えたようだ。
話してくれた花は、京子に掴みかかりそうな勢いで聞き直した。
「ねぇ、京子っ!あんた、本当はやってないんだよね!?そんなやつじゃないよね!?」
祈るような声が悲痛に聞こえて、京子は表情を曇らせた。ルリも、何も言えなかった。
ただ、ルリが何も言わなかったのは、花に呆れたからだ。