REBORN! 長編
□第9話
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その翌日、何事もなく授業を終えたルリは携帯の電源を入れた。
少し待てば、なにかを通知する光が灯る。真っ暗だった画面は、ボタンひとつでメッセージを浮かび上がらせた。
「蔭西」
メッセージを全部読む前に、ルリは再び画面を暗くした。携帯を鞄にねじ込んで、黒板前に立つ教師の元へ歩み寄る。
「なんでしょうか?」
「これ、風紀委員会からの預かりものだ。提出期限に遅れないようにな」
「はい。ありがとうございます」
少し分厚い封筒を渡されたため、周りにじろじろ見られている。しかし、ルリは気にせず席に戻った。
封筒はすぐに鞄にしまいこんだ。家に帰ってから開けようという心積もりだ。
「京子ちゃん、帰りましょう」
「うん!でも、その前にちょっと寄り道していい?」
もちろん、返事はOKだ。断る理由がない。
京子に誘われるまま、ルリは隣を歩いた。校庭の方に足が向かったとき、ルリはなんとなくどこに向かっているか予想がついた。
そして、その予想は的中した。
「おお、入れ蔭西!お前ときっちり話したいことがある!!」
ボクシング部の部室で仁王立ちする、この並中のジャージを着た男子生徒。彼はルリの1学年先輩にして、京子の兄である笹川了平だ。
常に真夏のアスファルトのごとき熱さを持って生きる彼の宝は、妹の京子と言っても過言ではない。
呼び出された理由は安易に想像がつく。ここ最近の出来事を思えば、それしかない。
だが、あえて聞くというのが正しい礼儀だろう。ルリは微笑みを浮かべて尋ねた。
「どんな話し合いでしょうか?」
「おお!よく聞け!!」
了平はすうっと息を吸い込んだ。きりっとした顔つきになったので、自然と空気が張り詰めた。
想像がついているとはいえ、改められると緊張する。ルリも京子も、真剣な顔で了平の言葉を待った。
「蔭西ぃ!!ーーーボクシング部に入らんか!?」
「違うでしょお兄ちゃん!!」
ずるっとルリは肩を落とした。つい、笑みを溢してしまう。
顔を合わせれば必ず言われることだが、まさかこんな時にも言われるとは思っていなかった。
「おお、すまん!間違えた!!」
だが、入部してほしいのは事実だと言って了平は笑う。豪快に笑う彼を見ていると、肩に入っていた力が緩んだ。
入部の件は改めて断り、ルリは本題に入る。すると、了平は真剣な表情をして仕切り直す。
「話は全て京子から聞いた。自らの危険は二の次 三の次、第一に京子を守ってくれているそうではないか!」
鼓膜を突き破りそうな程の大声を出し、拳を握って前のめりになりながら話す。彼は、かなり熱くなっていた。
灼熱の太陽を思わせるこの人柄は、さすが次期ボンゴレ晴れの守護者だ。
「俺の目が届かんところで京子が危険に晒されたのは無念だった……。しかし、お前が傍にいれば安心だ!!」
了平は、じっとルリを見つめた。見構えるルリに、了平はこう言った。
これからも、妹を頼む。と。
自分の目が届かないところにおいて、1番頼りにさせてほしいと誠心誠意頼み込んだ。
しかし、フリーズするルリを前にして、了平は誠意が足りないと思ったのだろうか?
数メートルの間隔を空け、「この通り」と頭を下げてより強く誠意を示した。
困惑を露にしながら、ルリは了平に歩み寄る。しかし、了平はなかなか頭を上げない。
「本当に、妹思いのとてもいいお兄さんですよね」
妹の安全のため、重い頭を容易く下げる。その姿は尊敬に値する。
優しい兄、かっこいい兄。ルリは、遠く離れた母国にいる兄を思い浮かべた。
兄が妹を案じる気持ちは、痛いほど知っているつもりだ。
「ーーー了平さん、私に任せてください。しっかり、京子ちゃんを守りますから!」
ルリは了平に笑顔で誓った。