銀魂 長編

□第参話
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見回りと買い物を終えた二人は屯所に帰り、早速土方の元へと報告に行っていた。


土方は自室で刀の手入れをしている最中であったが、二人を部屋の中に入れた。


「どうだった、初めてのスーパーは」


刀を台の上に戻し、土方は二人を見る。瑠璃は少し考えるように目を伏せ、そして呟く。


「すーぱーはすごいところ、というのは分かりました」


土方は怪訝そうな顔をして「すーぱー?」と呟いた。それから、ふっ と吹き出した。


「そうか、ならいい」


あえて発音についてつっこまないが、土方はおかしそうに喉をククッと鳴らした。


山崎はやはり同じところが気になることを確認でき、小さく笑った。


一方、発音が違うことに気がついてすらいない瑠璃は不思議そうに目をパチパチさせる。


不思議そうにしているまま、瑠璃は言葉を続けた。


「それと……坂田さんに会いました。万事屋さんの」


さらりと告げられた事に土方の眉が動いた。さっきまで笑っていたというのに、不機嫌そうな顔をする。


「万事屋だあ……?あの野郎と会ったのか」


瑠璃は動じずにこくんと頷いた。その横では山崎が身を強ばらせている。


鬼の副長と呼ばれる土方の不機嫌時の迫力は相当なものだが、瑠璃にはそれほど効いていないようだ。


平然とした様子で言葉を続ける。


「裏表が、無さそうな人……ですよね。あと……」


副長に少し似ています、と言いかけたが、瑠璃はすんでのところで言葉を飲み込んだ。


帰り道で山崎にその事を話したとき、山崎は絶対に本人には言わない方がいいと言っていたことを思い出したのだ。


瑠璃は別の言葉をすぐに見つけ、口に出す。


「優しそうで、いい人です」


副長と同じで。という言葉は胸にしまった。


土方はあまり納得がいかないようではあったが、これ以上の追及はいなかった。


「なんでちょっと好感度高いんだよ……。あいつは天性のろくでなしだぞ」


はぁ、とため息をつき、土方はこめかみを押さえた。山崎も少し残念そうだ。


そんなことはあまり気にせず、というより分かっていない瑠璃は時計を確認した。


「そろそろ、失礼します。稽古の準備がありますので」


その言葉で山崎も土方も時計を見た。確かに、あと20分で全体稽古の時間だ。


「やっべ、俺も用意しねぇと……」


「俺も失礼します!」


慌て始める二人と、特に表情の変わらない瑠璃。瑠璃は既に障子の向こうに片足を踏み出していた。


慌てて山崎も続き、瑠璃と共に礼をして部屋を出ていった。


それを見送ってから、土方も剣道着と竹刀を用意し始めるのであった。
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