銀魂 長編
□第四話
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雨の中歩き続け、ようやく柳生家の館へと続く階段の前までやって来た。
「総悟、来い。瑠璃は少し距離を取って歩け」
瑠璃は小さく頷く。沖田は頷きはしなかったが、足を前に踏み出した。
敵地に踏み込む緊張感が、3人の間にピリピリした空気を産み出した。会話はなく、コンクリートと草履が擦れる音しか聞こえない。
いつでも抜けるように刀に手を添え、階段を上がっていく。やっと門が見える所までくると、2つの人影があった。
前の2人が立ち止まる、それによって瑠璃も気づいた。目で合図しあい、音をあまり立てないように近づいた。
こちらに気づいている様子はなく、門の前の2人は小声で話し合っていた。その声に耳を傾ける。
「なあ、いつ行く?あいつら勝手に盛り上がってるぜ」
「駄眼鏡のくせにかっこつけてるネ。それに、なんかゴリラまで来てるみたいアル」
「だな。さっすがシスコンにストーカー、よくやるわ」
その会話を聞き、土方と沖田は顔を見合わせた。2人の正体を確信したようで、苦い顔をする。
瑠璃は、片方の声には聞き覚えがあった。
それは土方と同じくらいの身長の男の方だった。笠で髪なんかは見えないが、白地の派手な着物は最近瑠璃が知り合った男の物と似ていた。
もう片方の人は少女だ。こちらは瑠璃と面識がない。赤い傘を差している彼女はチャイナ服を着ていて、瑠璃よりも身長が低かった。
瑠璃の頭の中に浮かんだ名前が口から溢れそうになったとき、土方が動いた。門の前の2人に近づき、男の方の肩を掴んで、自分の方に向かせた。
「万事屋、てめぇ何してんだ!!」
ボリュームを抑えた声であったが、その声が煩わしいというように沖田は耳を塞いだ。
万事屋、ーーー坂田銀時は土方を見ても特に驚かずに手を払い除ける。
「その瞳孔が開いた悪人面、もしかして土方君?何しにきてんの君」
「うるせぇよ、こっちが先に聞いたんだよ!」
質問に答えろ、と言って土方は銀時を睨み付けた。銀時はとぼけるような顔をしながら、それでもちゃんと答える。
「新八のやつが俺に黙って殴り込みなんて面白そうなことやろうとしてるからよぉ、混ざってやろうかなって」
うんうん、と頷き、銀時は親指で後ろの門を指差した。敷居の向こうは雄叫びや竹刀のぶつかる音が激しく、また、何人かは倒れていた。
「ま、とりあえず俺らも入ろうぜ?どうせお前らもゴリラの協力しにきたんだろ」
ニタッと笑って銀時はまた門に向き合った。彼は遠慮なく、敷居を跨ぎ、近くにいた男を愛用の木刀で殴り倒した。
それを見ていた瑠璃は一瞬目を見張ったが、次の土方の言葉でその目はいつもの眼差しに戻る。
「俺らも行くぜ」
チラリとこちらを見た土方と視線を交わらせたのち、瑠璃は頷いた。
「はい」
と鈴の音のような小さな声で返事をする。