銀魂 長編

□第五話
2ページ/6ページ

沖田の首に刀を寄り添わせていた南戸は、ニヤニヤと余裕そうな顔で銀時たちを見る。


武器を捨てろと定番の台詞を吐く彼を、人質である沖田はじとっと睨んでいた。


全員がそれぞれの刀や傘に手をかけるのを見て、柳生側はニヤリと笑った。


「理解が早くて助かりますね。そうです、大人しく武器を捨て、手をーーー」


手を上に上げろ。その言葉は東城の口から紡がれなかった。


まるで打ち合わせでもしたかのように、全員が武器を前方にーーー柳生四天王の方へと投げ捨てたのだから。


これには彼らも無様な悲鳴をあげて避けるしかなかった。仲間であるはずの沖田も、巻き込まれたことに驚いている。


「何やってんだああああ!?」


叫ぶ南戸に、銀時はやる気がなさそうな顔をして当たり前のように呟いた。


「捨てろって言うから」


「どんな捨て方!?人質見えてねぇのか!!」


捨て方の指定まではされていなかったので、文句を言われる筋合いはない。とばかりに、銀時は彼を無視した。


四天王たちと沖田の距離は離れた。こちらの臨む結果を得られたのだから、手段などどうでもいい。


沖田の近くにはそれぞれの武器が散らばっている。それを拾うついでに、土方は沖田を見下ろした。


「残念ながらこいつに人質の価値はねぇな」


その横で神楽も同様のことを言い、ゲラゲラと笑った。それは沖田を苛立たせるには十分であり、「あとで覚えてろ」と呟かせた。


瑠璃は沖田をじーっと見つめていた。だが、沖田と目が合えば、そっぽを向いてぼそりと呟いた。


「……似合ってたよ、人質」


「おい、てめえも後で覚えてろぃ」


馬鹿にしてんだろ、という沖田の言葉は聞き流す。瑠璃は最近、沖田は適当にあしらってもいい人間だと気づき始めているようだった。


その時、銀時たちが入ってきた場所とは別の障子が開いて、小柄な者がやって来た。


この者が、柳生九兵衛だ。


一触即発の空気になったが、九兵衛は冷静な態度を崩さずに、場所を移すことを提案した。


部屋を出て、再び対峙する。柳生家の門弟は彼らの後ろに控え、こちらを睨み付けている。


しかし、そんな威圧に動じるような者はこの中にはいなかった。皆堂々と構え、九兵衛の言葉を待っている。


「ルールは柳生流に従ってもらう」


それに近藤や神楽はやじを飛ばすが、九兵衛は聞き流す。そのまま、門弟の1人に視線をやった。


男は何枚も積み上げた小皿を持って銀時たちの前に立つ。それを見届けてから、九兵衛は再びルールを説明した。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ