みづのながれ/天上の焔

□月下の魔物
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第2話

星々の行方


あくる晩、劉備はひとり城内の庭を歩いていた。戦もなく平穏な日々が続いていたが、それがよくないのか、なまった体では寝つけない。書を読むか酒を飲むか、そればかりなので、これといった理由もないが歩いてみることにした。聞こえるのは土を踏む音と手にした明かりが風ではためく音だけ。見上げれば物見矢倉の屋根にかかる白い月があった。あそこへ上ってみようか。物見矢倉らの下へ歩いていくと、兵士が二人立っていた。普段なら矢倉に一人、交代の者が下に一人立つのだろうが、いったいどうしたのかと二人に近づくと、

「孔明先生が上におりますので、我らは先生が降りるまで待っているのです。」

と言う。

「ほう、先生が。」

劉備は思わぬ人物の登場ににやりとして、手にしていた明かりを預けると、矢倉のはしごに手をかけ、上って行った。




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