みづのながれ/天上の焔

□鬼に口寄せ魂を振る
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手分けして探す手筈を相談していると、兵がひとりやってきて、何者かが孔明を訪ねてきたという。

「今は人を払え。」

と劉備が言えば、その者は孔明の病を治しにきたという。

「これはいったいどういうことだろう。」

「わからん。しかしこれは天の助け。」

3人で驚いていると、薄汚れた道着を引きずって男が現れた。

「あなたが孔明を助けに参ったのですか。」

劉備が尋ねると、男はぼそぼそとよく聞き取れぬが、話しだした。

「やれ、その男が孔明というのかは、知ったところではないが。あたしは最近天文に興味があって、ずっと強く輝いていた星が光を失うのを昨晩見て、人の命が弱っているというから、さあてその星の警告は真かこの目で確かめようと参上したわけです。話しを聞けば本当に弱っているというじゃあありませんか。ここにあたしがいるのも天が仕向けたことでしょう。手立てがないと思うなら、あたしにその病人を見せてくれませんか。あたしもこれでも道士のはしくれ。病を見破りましょう。」

顔をあげたその男の顔は酒に酔ったような赤ら顔で、姿もあまりにみすぼらしかったので劉備は訝しく思いながら、今は他に頼る手もなかったので、男を寝台へ導いた。


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