book.

□ペンギンがイルカを捕まえたそうです。
1ページ/2ページ


僕の大切な、大好きなハルちゃん。
僕がハルちゃんが一番好きなようにハルちゃんも僕が一番好きじゃないといけない。

「ペンギンがイルカを捕まえたようです。」

「ハルちゃん、朝食…」

渚は慣れたように遙の家の中を走り回る。何時も居る風呂場へと向かう。

「やっぱり居た、朝食は作ってあるの?」

「ああ。」

素っ気ない、必要最低限の返事にむす、とした表情を浮かべる渚だが、遙の元に行くとそのまま唇を渚のそれで塞いだ。

「……んっ」

渚はそのまま舌を中へと滑り込ませる。最初の頃はしつこく抵抗していたのに今はもう慣れたように控えめに絡ませてくる。
物足りない、と思ったのか渚は歯列を丁寧になぞる

「んっ…なぎ、さッ…」

名前を呼ばれて漸く唇を離すと遙の口端からどちらのか分からない唾液がツーっと垂れていた。少し上がる息を止め、遙がいつものような無表情で告げる。

「学校に遅れるぞ」

「そうだね!……ハルちゃんは今日は家に居てね」

___学校に行かせたら誰がハルちゃんを狙うか分から無いから。いつも、ハルちゃんの中は僕が一番であればいいから。

「………ああ。」

沈黙の後の短い返事。然し、渚はそれだけで充分だった。無邪気な笑顔を浮かべて「行って来るね!」と元気に大きく手を振りながら、一歩、また一歩、と遙の家から離れて行く。渚と遙の家から。
玄関まで手を振ってくれている遙を振り返らず、学校へと向かった。

「おはよう、渚」

「おはようございます、渚君」

「おはよう!マコちゃんにレイちゃん!」

にこにこ、と笑みを浮かべて挨拶する。真琴が寂しそうに眉を下げて、「ハル…今日も来ないね」と呟いた。渚が来させないようにしている、なんて事実を知らず言葉を出していた。渚も心配そうな表情を作り「部活には来ると思うよ」と言った。

*遙side*

…暇だ、学校に行かなくなって何日目だろう。そんなことを考えている間にまた1分、2分…と時が過ぎて行く。

やる事が無いので、いつものように俺は風呂の中に水を溜めて顔までしっかり浸かっていた。

やっぱり、水はいい…余計な事を考えず、ただじっとして感じるだけの存在。

今日は部活に行かせて貰えるのだろうか。渚に逆らう事が出来無い。あの顔が、悲しみに歪んだ時の罪悪感が凄い。だから、渚の言葉を毎日聞いて…、何もしない日々。

渚は何時も「好き」とか「愛してる」と言ってくるのにすることは怖い。男である俺を無理矢理抱いて、毎日濃いキスをして…。

嗚呼、そんなことを考えるのが面倒臭い。俺にはただ、水があれば充分なんだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ