book.

□友愛。
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江side.

お兄ちゃんも死んで、遙先輩も死んで…おかしい。絶対に。

あの日から、真琴先輩はおかしいままだし、部員である渚君や怜君にも覇気が無いように感じられる。

遙先輩が亡くなる前の日に届いた一通のメール。

“明日、終わらせる。”

その時は意味も分からず、ただ首を捻っただけだった。だけど、その次の日に彼は死んでしまったんだ。犯人はきっと……

「真琴先輩。」

ぽつり、と呟いたこの言葉は私達水泳部一年生だけがいるこの空間だけに響いた。

渚君も怜君もこく、と頷いた。

「私…仇を取りたい。」

「江ちゃん…それは僕達も一緒だよ。ハルちゃんも…リンちゃんも…殺されちゃって…。」

「ええ、この頃…真琴先輩の様子も変ですし。」

二人とは、遙先輩が死んだ翌日に話合いをして、二人を殺した犯人を殺そうと決めた。

きっと、これは渚君、怜君の死んだ二人に対する愛情なんだと思う。

私達は、計画を立てた。真琴先輩を海に呼び出して私が彼を問いただす。きっと、彼は真実を知った私を殺そうとしてくる筈だからそこに二人が真琴先輩を押さえて遙先輩にしたように海に沈める。

…成功するかは分から無い。もしかしたら、死ぬかもしれない。恐怖で体が震えそうだったけど、二人だって怖い筈だ。殺人に手を染めるんだから。

「決行は_____明日」

二人は頷いた。

そして次の日。昨日は眠れ無かった。ドキドキして、不安や恐怖にも潰されそうで。通話ボタンを押す時だって、体が震えて力が出なかったけど、それを何とかこらえて呼び出した。

____真琴先輩、聞きたいことがあります。

____うん、分かった。

彼の声には緊張が感じられた。きっと、気付いたのだろう。だけど、ここで止めることは出来無い。

待ち合わせよりも早く海岸に来て海の冷たい風を感じながら深呼吸する。

暫くして、真琴先輩がやって来た。

軽く一礼すると、先輩は「…それで、聞きたいことって?」とすぐに本題に入って来た。

「……殺したのって、真琴先輩ですよね?」

「………誰を?」

知っているくせに。そう思いつつも言葉を繋げる。

「お兄ちゃんと、遙先輩です。」

「ああ……うん。殺したよ。」

普通に罪を認めた彼を目を丸くして見つめる。真琴先輩が「江ちゃんも気付いたんだ、じゃあ…死んで貰うしかないかな」と言って近付いてくる。後ずさりしながら、少しずつ距離を離そうとするが、近付いてくるばかり。私は、海に近付く。

「マコちゃん!」

「真琴先輩!」

二人が驚く先輩を押さえて海の中に頭を沈める。予期せぬ事態に先輩は驚いていたけど、抵抗することも無く、沈んで行った。
遠くへ、遠くへと彼の体が流されて行く。

その様子を私達はただ見つめているだけだった_________

翌日、話題になっていた。犯人は先輩だと警察は確信して逮捕する一歩手前で死体が見つかって…騒然としていた。

「僕達…これで良かったんでしょうか」

怜君が呟くように訊ねたけど、返事などなく。ただ静寂だけが残っていた。

屋上のランチも随分寂しくなったと思う。私達の環境も変化した。でも、私は犯罪に手を染めた彼らを尊敬する。

___何て美しい友達への愛情。“友愛”。

Fin.

落ちない……。
そして、マコちゃんに酷いことを…orz

マコちゃん、もう一話頑張ってくれ!←

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