book.
□奴隷とは。
1ページ/4ページ
奴隷とは。主人に全力で仕える者。
奴隷とは。主人に忠誠を誓う者。
「……そうか。」
七瀬遙は疲れ切っていた。どこか、砂漠に来てしまっていた。噂では、この砂漠の街に綺麗な水がある、という話を聞いた。
然し、そんなもの、どこにも無い。
黄色の髪の男に水を分けて貰おうと声を掛ければ冒頭のように急に「奴隷とは」と語り出すでは無いか。
遙は元々、お人好しなのか話を聞いてやらないといけないような気がした。
照りつける太陽、風一つ無い、乾燥しきったこの街で長々と話続けられるのも嫌になってきた頃、一通り終わったのか、まだ幼さを残す無垢な顔が、瞳が遙を捉え、一言。「君なら、きっと凛様の召し使いになれるよ!いいなぁ、毎日水の傍に居られるなんて」ときらきら、とした瞳でみつめながら言う。勿論、この地域に詳しく無い遙にとってはよく分からないことだ。
「渚、何してるの」
「あ、マコちゃん。」
遙はやっと、この煩い奴から解放されると胸を撫で下ろした。「マコちゃん」と呼ばれた男性は歳は遙と変わり無く、八の字眉毛が印象的の優しそうな青年だった。
そういえば、と先程の“凛”という男が気になっていた。何故、そいつの召し使いになれば水と毎日触れられるのだろうか、この疑問を「マコちゃん」に聞いてみた。
「あの、どうしてここには水を持っている奴が居ないんだ?…凛って奴の召し使いになれば毎日水に触れられるって……?」
質問を投げられた、「マコちゃん」は困ったように八の字眉毛を上げて、「…そうだね、」と喋り出した。