Monochro†Legend
□第5夜 海に潜む者
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我(わたし)は、いつからここにいたのだろうか
地に埋もれ、雨に打たれ、荒波にのまれ、流れ漂い
そうして辿り着いたこの街に、どれほど長い間、いただろうか
神でない我(わたし)が、神となったのは、いつの頃だっただろうか
さて、もうすぐ朝が来る
信じる者達へ
今日も幸を届けよう
海に潜む者
『……ここで待ってなさい』
誰かが、私の頭に手を乗せて離れていく。
(行っちゃだめ!)
その先には、絶対的な死が待っているんだ、と解る。
でもそれは頭の中だけで、身体は動かない。
手を伸ばすことすら、私には出来ないでいるようで、顔の見えない誰かが遠ざかる。
『絶対に離れちゃだめよ』
次に現れるのが、森。
女の人が、隣にいるもう一人の誰かと手を握らせて、そう言って離れていく。
(一緒に…行かなきゃ)
その人とはもう会えないのだと悟った私の手を引いて、『誰か』と一緒に走った。
でも、一瞬で場面が切り替わって、気味の悪い恐ろしい何かと、私を背に、それに立ち向かう背中が見えた。
『逃げろ…○○っ!』
そして、これが最後。
『よくも私を、AKUMAにしたなっ』
アレンに対して言った、マナの声がして……
──罪悪感で、目が覚める。
ガンっ
飛び起きたせいで、二段ベッドの上へ思い切り頭をぶつけた。
「…いっ……」
歯を食いしばって、一時的だろう強い衝撃の余韻に耐える。
(これ絶対たんこぶになるな…)
痛みで出た涙を拭いつつ、時間を確認しようと、ラムダを探す。
すると、ラムダはもぞもぞとシーツから這い出てきて、寝ぼけたようにふらふらと私の膝に乗った。
ふるふると体を揺らし、ろうそくのようなぼんやりした光を放って、ラムダが時刻の記された文字のホログラムを頭の上に浮かばせる。
(…4時かぁ……早く起きすぎたな)
だからといって、また眠る気分にもなれない。
理由は簡単。嫌な映像のせいだ。
あれが記憶というものならば、思い出した時の自分が嫌な気持ちになることは当然で、そして容易に想像がつく。
だから私は、これがただの夢であればいいと思うのだけれど、脳裏に、耳に、張り付いた絶対的な『記憶』が、夢のままで終わらせてくれないんだ……。
なんとなく暗い気持ちになりかけた私は、外の空気を吸おうと、簡単に荷物を持って外に出た。