雑記帳 メモ帳

□Rain
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『Rain』







飛行機雲が一筋、


青空に白線が伸びていく。





それを追いかけると、


首を上に、そして後ろに反らさなくてはならなくなる



私は、反らした首に気づかずに、


転倒する。





その上に広がる青い空を、

白い太陽の眩しさに目を細めながら見つめるのに夢中になって、



そうしていると



必ずどこからか



『君』がやってきて、



私の顔に陰を作るんだ。










「…何やってるんだ?」



時刻は午後三時半。

夢から覚めたような錯覚。

隣には、クラスメイト。



「……」



残念ながら、今日は曇り空。

影を作ったのは、非常に残念なことに、一番嫌いな男の子。



「とりあえず何もしてないならそこ退いてくれ」
「……やだ」
「……あっそ」



屋上のコンクリートは暖かい。
頬を撫でる風は冷たい。

雨が降る予感がする。



「……」
「……」



隣に寝そべったその男の子に、



「雨降るかもよ」



と、教えてやる。


親切心からではなく、ただ単に早く退いてほしいだけ。



「あっそ」



相変わらずそっけない返事が返ってきた。



「……濡れちゃうよ」
「…別にいい」
「あっそ」



嫌味を込めて、口調を真似してやる。



「……」
「……」



沈黙。


視界の端はまったく動く気配もなく、

冷たい風だけ、髪を揺らして視界を遮る。



もう知らない


無遠慮なこの男子は、

毎日のように、

空を見上げる私を、一人にしてくれない。



「……空なんか見て、楽しいですか?」



雲が集まって、暗くなり始めた空を凝視する。

少しだけ濃淡のついた空は、風で動いていた。



「…自分はどうなんだよ」
「……」



私は、空を見てるんじゃない。

答えてはやらないけど、

代わりに、ちらっとそいつを睨んでやった。



「……」
「……」



ちらっとのつもりが、目がはなせなくなってしまった。


当たり前だ。

だって、てっきり空を見ていると思ってた彼と、目が合ってしまったのだから。



「「…」」



互いに
沈黙。


私は今、どんな顔をしてるだろうか…。

目の前の顔は、仏頂面。

私も、そんな顔ならいいな、
と少しだけ思う。



まだ私には

この胸の鼓動は早すぎる。



「…何?」
「…そっちこそ何?」



まだ新しすぎる記憶の中に

もう夢でしか見れない笑顔がある。


その笑顔が見える内は…



「…別に」



先に目をそらして、また空を見る。



「…お前、可愛くない」
「それはどうも」



ゴロゴロと雷の音。

目の先にある空はどんどん暗くなる。


頬に雫が落ちてきた。



「あっ…降ってきた」



手加減ははじめだけで、すぐに音を立てて雨が落ちてくる。



「…泣きたいなら泣けばいいのに」



そんな声は、雨音に消えてしまえばいい。


私は空を見上げたまま、目をつぶった。


雨が上がったら、帰ろう。
服も歩けば乾くだろうし、ただの通り雨だし…。



「…帰れば?」



隣にいる彼に言うが、返事はない。

あーあ、濡れてしまうのに。
馬鹿だなぁ


そう頭で呟いていると、

顔に雫が落ちてこなくなった。


「……」



ゆっくりと目を開ける。

目の前には、
白いシャツ。

空より低く、私より高い位置にあるそれをただ見つめた。



「馬鹿だなぁ」



苦笑する私に、



「馬鹿だよ」



と、頭上から不器用な返事が帰ってくる。



「お互い様だろ」
「そうかもね」



結局その日は、


雨が上がるのを待たずに帰った。



(End)


(Motif*Memo→)

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