頂物/捧物/落書
□似たもの同士
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フェ「アレン」
ア「フェーリ」
フェ&ア「ばんざーい」
談話室で両手を挙げ、叫んだ2人。
嬉し泣きを始め、互いに「長かった」と肩を叩き合っている。
なぜ2人がここまで喜んでいるのか。
それは3年以上耐えてきた苦痛・悩みから解放されたから。
つまり
「「借金完済おめでとう」」
師・クロス=マリアンの借金返済完了。
教団に立て替えてもらったのだ。
彼が際限なく増やしていった伝票の束が消えたことへ、もはや2人にしかわからない喜びを噛み締める。
咲輝(以下咲)「おめでとう」
といって、2人にお茶を出す咲輝。
あまりの喜びっぷりに、少々あきれ気味だ。
咲「そんなに酷かったの?元帥の借金事情」
咲輝の質問に、2人は同時に紅茶を一口飲んだ。
そして、待ってました、とばかりにため息をつく。
フェ「そりゃあ、もう、酒場から女遊びから食事から、全部ツケ・ツケ・ツケ・ツケ。
私たちを弟子だと言いふらして、借金取りに追わせ、当の本人はのうのうと次の酒場に向かう」
ア「皿洗いに掃除・船漕ぎ・力仕事でも返しきれず、挙げ句ギャンブル。あらゆる手をつかって返済をしても、次の日にはまた伝票の束」
フェ「少しでも金が余れば、容赦なく奪い取って酒に変えてしまう。もう、あの人から学んだのは逃げ足と言い訳くらいなものです」
まくし立てるように語る2人。咲輝は笑うに笑えず、
咲「そこまで言わなくても…(打ち合わせでもしたの?その語り)」
と、2人に言った。
それを聞いたアレンは、
ア「でも聞いて下さい、咲輝さん」
と机に手をついて身を乗り出す。
ア「僕らが借金の取り立て屋から逃げ回っていた頃、助けを求めたら、あの人なんて言ったと思います?」
わかるわけもないし、考える気もなかったが、咲輝は尋ね返した。
咲「さあ?なんて言ったの?」
すると、今度はフェーリが答えた。
フェ「『逃げるから追われるんだ。俺みたいに逃げなけりゃいいだろ』」
沈黙。
これには流石に黙るしかない。
咲輝は「あ、は、は」と空笑い。
フェ「それにですね、咲輝さん。私達がここに来た時、神田に危うく三枚に卸されかけたのだって、よくよく考えてみれば、失踪しやがったバカ師のせいじゃないですか」
フェーリが、憤りが隠せない様子で腕を組む。
横で頷くアレン。
咲「でもあれはコムイ兄さんが」
フェ「一緒に来てくれればよかったんですよ。
さして忙しいわけでもなかっただろうし、酒ばっかり飲んでるんなら弟子の入団に立ち会ってくれたら、はじめから誤解なんて受けなかったんですよ」
そう思いませんか?
フェーリは咲輝に賛同を求めた。
咲「いやまあそれはそうかもしれないけど……」
ア「イノセンスのことだって、発動の仕方すら教えてもらえなかったんですよ」
フェ「自分で考えろ、とか言われて。それでわかるなら苦労しませんよ」
咲「アハハ、まあ、そうだよねぇ、うん…(なんか面倒なとこ話しかけちゃったなぁ)」