罪人と処刑人

□第四話 咎付き処刑人
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「…あなたたちが信じるのは何ですか?」

「あなた達が信じているモノは『神』ですか?」

「それは本当に『神』でしょうか?」

「あなた達が信じているのは何ですか?」

「『神』はここにいますよ…



あなた達の…目の前に…」


















第四話
咎付き処刑人

〜何が過ちなのか、決めるのは…〜

















「ふぅ、こんなもんか」



level3スラム地区B【ボンド】。
テントの張り替えを一通り終え、汗を拭う第三部隊隊員。



「あとで中の骨組みチェックしとこうぜ」
「だなぁ…この辺り、結構風強いしな」



仲間達と次の作業を相談しながら、マニュアルを手に空を見上げた。


雲の流れが早く、太陽がたまに隠れたと思ったら直ぐに顔を出す。

真新しいテントがバサバサと揺れた。



「コールマンは?」



ふと、一人の隊員が当たりを見回した。



「ああ、『地学オタク』なら、今子供のお守りしてる」
「楽でいいよなぁ、サポート班のお留守番は」
「いやでも、子供に邪魔されなくて助かるじゃん」
「確かに」



そう苦笑して、彼らはサポート班の班員たちに思いを馳せた。



「やっとあいつらも『仕事らしい仕事』できて良かったよ」
「ん?」
「ほら、李×水野班」



思えば、彼らが今『ここ』にいないのは、はじめてかもしれない。



「この隊にあいつらみたいなのいるなんて、ただの宝の持ち腐れってやつだよな」
「…訓練も、俺らと一緒じゃなぁ」



一人の隊員が、いつかの訓練のことを思い出し、ため息する。

カナトと手榴弾の訓練をした際、投げたものが誤って近くに落ちてしまったことがあった。

経験も勉強も足りなかった自分は、投げて満足してしまったが、気づけば爆風に晒されていた。

カナトが弾の軌跡を見て、瞬時に危険だと判断し、引っ張ってくれなければ…危うく爆発に巻き込まれるところだった。


それを免れたからこそ、五体満足で現在を生きている。



「とくにカイなんか…なぁ?」
「……グレまくってたもんな。酒に逃亡、モノ壊すわ喧嘩するわ…。俺グーパン2つも顔に食らわされたぜ」
「ははっ…まっ…今はいいんじゃね?マヤ姫様々だな」
「ライトさんも頼りになるし。ほんとツイてるよ、俺ら」



よいしょと、道具箱を抱え、隊員用テントに入る。

作業の一段落にふぅと疲労感のある息をつき、1人はどっかりと地べたに座り込んだ。



「ん?」



ラジオを付けようと手を伸ばした隊員が、首を傾げその手を止めた。



「どした?」
「なぁ、これ…」



座って茶をすする仲間に、小型のラジオ機器を持って行く。



「ラジオ壊れてんのか?」
「いや、昨日はなんともなかっ…あれ?」
「なんだよ?」



手に持ったラジオを見て1人挙動不審になっている仲間に、カップを置いて怪訝な顔をする。



「なんだ?なんともないじゃないか」
「いや…さっきつけたら針が変だったんだよ…」
「まぁ、この辺もともと電波悪いしなぁ…」



少々残念そうにラジオを見つめる仲間。



「なんか聞きたい番組でもあったのか?」



何の気なしにそう尋ねてやると、彼は首を振る。



「いや、そういうわけじゃないけど……あっ」



そしてまたラジオの針を見つめた。



「ほら!」
「どれどれ?」



突き出されたラジオをカップに口を付けながら見てみる。

そして彼はすぐに眉を歪めた。



「…なんだこりゃ」
「なっ!変だろ?」
「壊れてるって感じには見えねぇけど…」
「なんか変な電波でも出てんのかな?」
「さあ?」



右に左に、大きく、そして所々小刻みに揺れる奇妙な針に、2人はただただ首を傾げた。
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