□自室
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眺めてみる。



黒い、本当に黒いその黒目をこちらに向けて



人差し指と親指で軽くつまむようにして持った。



今にも動き出すのではないかと思った。



しかし、例えそれが生きていてもそれは無理だと気付いた。



人の目が動くのは瞼の中で眼球が動いているのだ。



この状況ではありえない。



そうだ、一つ試したいことがあったんだ。



携帯を取り出して、ライト機能はどこだったかな、と探す。



最近携帯を変えたため、まだ操作に慣れない。



やっと見つけてライトをつけた。



それを真正面から眼球に当ててみる。



もし変化がなければ、これは玩具だ。それか、死んでいる。



もし、変化があれば。



これは。



それは変化を起こした。



いや、「起こした」より「起きた」というべきか。



仮にも反射的なものである。



確かにその瞳孔は小さくなった。



私は驚き、思わず手を放してしまった。



それはカーペットに落ち、少しだけ跳ねた。



ころころと転がり、そしてふと動きを止めた。



黒目の部分は下を向いているらしく、私からは白い部分しか見えない。



小さくなった。



これは証拠だ。



これが、この眼球が生きているという、証拠だ。



どういうことだ、いったい誰の。



いや、違う。



何故、どうやって生きているというのだ。



見間違いではないのか



いいや、違う、私は確かに見たのだ。



もう一度足元に落ちているそれを見た。



こちらを向いていた。



私の足でも、手でもない。



俺の目を、見ていた。



私は一体、これをどうしたらいいのか。



何故、拾ってきてしまったのだろうか。





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