書
□箱
1ページ/1ページ
私はそれを箱の中にしまい込んだ。
やはり、少し気味が悪かったのだ。
だから貰い物か何かの菓子の箱にしまった。
ある程度高さのあるものでないと入らない。
それが収まる箱を探す必要があった。
“それ”に背を向ける。
こちらを見ている。
ずっと寒気を感じていた。
舐めるような視線が冷たい汗とに背中を伝う。
箱を見つけた時も、振り返るのには勇気がいった。
拾うとき、私はわざわざ後ろに回り込んでから拾い上げた。
どうしても、あの黒目と真正面で向かい合おうとは思えなかった。
しまい込んだ後、厳重にひもで縛った。
そして、それをそのまま机の引き出しの奥にしまった。
捨てる気にはならなかった。
なれなかった。
部屋はしんと静まり返っている。
かた、と何かの音がした。
私の脳裏には箱の中で眼球が動く様子が浮かんだ。
背筋を何か冷たいものがはった。
今はここにいたくない。
出かけよう。
私はあの路地へ向かうことにした。
もう一度ジャケットを着て、部屋を出る。
後ろ手にドアを閉めるとき再び、かた、という音を聞いた。