夕陽、見上げて
□第1話―843年―
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ふと手元のブレスレットが目に入る。
「……………。」
ぎゅっと左手に付いたそれを、右手で手首ごと握りしめた。
「……毎年この日が雨とはね。皮肉かよ。」
それとも自分が呪われているのか。
ギーー。
扉が開いたのだろうか。だとしたら、こんな夜中に誰が?
「…誰かいるの?」
暗闇に向かって出した言葉は、闇に吸い込まれ消えた。
返答がないことに、若干の恐怖を覚える。
「―――っ」
急に月明かりが窓から差し込んだ。
思わぬまぶしさに、少し目をくらませる。
いつの間にか雨が上がっていた。
(あ……)
その月明かりに照らされて、一人の人物が浮かび出された。