夕陽、見上げて
□第2話
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「エルヴィン。入るぞ。」
軽いノックの後にリヴァイが現れた。
「今日の報告書だ。」
「あぁ、そこに置いておいてくれ。訓練はどうだ?」
「順調と言えるが、やはり本番はどうだろうな。壁外に出ることに慣れてきた新兵たちがどう活躍してくれるかによっても、また変わってくるだろう。」
「そうだな…。」
毎回多くの死傷者を出す壁外調査。
リヴァイが入団してからというものの、その死亡率は比較的落ち着いては来たが、やはりそれを0にすることはいつもかなわない。
エルヴィンに兵士達の状況を報告しているリヴァイの目に、ここにいるはずのない人物が映った。
「…おい、エルヴィン。なぜこいつがここにいる?」
「あぁ起こすなよ。気持ちよさそうに眠っているからな。」
ソファで眠っている人物は、静かに寝息を立てており、表情はエルヴィンが言うとおりまさに「気持ちよさそう」だ。
「大方、昨日はよく眠れていないんだろう。」
「あぁ、夜中に食堂であった。」
リヴァイはソファに近づきエリを見下ろした。
昨日の青白い顔を思い出し、少し良くなったその顔色に安堵の溜息をもらす。
そっと顔にかかった髪を払ってやると、んー。と反応した。
なんだか気分が良くなって今度は頭を撫でてやると、今度は少し顔を綻ばせた。
癖になりそうだ。
そんなリヴァイを見て、エルヴィンも静かに微笑む。
エリの穏やかな寝息と、紙とペンがこすれる音だけがその部屋に響く。
窓の外では、きれいな夕陽があと少しで地平線に沈むころだった。
【第2話】