短編

□「〜されている」
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「〜されてる……」

(びくっ!!)
 


急にハンジがつぶやくものだから、そんな大きな声でもなかったのに驚いてしまった。



「……何?どうかした?」



その後に続く言葉がなかったので、驚かされ損はゴメンだとハンジに先を促す。



「いやさぁ〜、自分が何かされてるときに『あ〜私今こんなことされてるんだ〜』と思うと、よりそのされてる事に感覚が集中するよね〜〜」



「………は?」

(ちょっとこいつ何を言っているんだろう?)



まだ意識は思考の中にいるらしい難しい顔をしたハンジから紡がれた突拍子もない一言。

エリはたまにハンジと友人である事を後悔するが、今もその時の一つに加わった。







【〜されてる】








「……お前らそれは新しい遊びなのか?」



それぞれ頭を動かすことに集中しており、長いこと動きを停止させていた2人を見て、リヴァイがツッコミを入れる。



手には書類。

大方、この執務室の持ち主であるハンジに書類を届けに来たところだろう。

 

「…………いや、ハンジが急に変なことを口走るもんだから固まってた。」



突然の第3者登場に本日2度目の驚きを食らったナマエは、再び声を出すのに少し手間取ったようだ。

リヴァイに返事をするのに少し間が空いてしまった。



「変な事じゃないよーっ!ちゃんとした理論さ!」

「理論だったとしても変でしょーよ」

「はぁ…今度は何なんだ?」







「―――というわけ。」

「………。」

ここで固まっていた理由をリヴァイに説明すると、リヴァイも同じく動きを停止させた。

しかし、あっという間に意識を取り戻し、そりゃ固まるわなと納得した表情をする。

さすが、ハンジとの付き合いが長いだけある。



「なんだよー、人を変態でも見るような目で!」

「安心しろ。いつもそんな目で見てる。」



もっともなリヴァイの返答に、ひどいなぁとしょげるハンジ。

ナマエは、ハンジがこんな理論をはじき出した理由を探るため、ハンジの手元にあるノートを覗き込んだ。

……ものの、何が書いてあるかさっぱりわからない。

さすが、変態のノート。



「あぁ、人間の感覚について考えててね!今は感覚が研ぎ澄まされる事例を考えてたんだよ。例えば、五感の一つが奪われるとかそういったたぐいのやつね!」

「……」



ノートをのぞき込むナマエに気づき、突拍子もない言葉の理由を説明するハンジ。

それを方耳でききながら、それを先に言いなさいよね、あんた。とナマエはため息をついた。



「意外だな。巨人にしか興味がないのかと思っていたが。」

「巨人について知るには、その比較対象である人間を知らなくちゃ始まらないじゃないか!」

「あくまでも、巨人にしか興味無いってのは変わんないのね。」



あたりまえだろ?!とリヴァイにくってかかるハンジに、今日何度目かしれないため息を漏らす。

もうどうでもいい。といった感じのリヴァイは、持ってきた書類の提出期限を伝えながらハンジの机に放り投げて退出していった。



(せっかくの休憩時間になんだか変な汗かいたわ。)



残り少ない休憩時間を睡眠に当てようと、再びソファに沈み込んだ。
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