夕陽、見上げて
□第5話
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「エリじゃないか。…元気か?」
「◎△$♪×¥●&%#?!」
「……。」
「あ、ミケーっ!こんなとこで何してんの?」
「ハンジか。さっきここでエリにあったんだが…。」
「あー…、逃げられたのね。」
【第5話】
壁外調査の後始末もほとんど落ち着き、兵士たちには2日間の休暇が与えられた。
それぞれ故郷に帰ったり、遊びに行ったりと思うままに過ごす中、エリは居残り組の一人だった。
ルームメイトのジェシカやぺトラも実家に帰ってしまったため、部屋には一人だけとなったが、エリにとってそれはとても好都合なことだった。
心置きなく寝れるからだ。
と言っても、お昼過ぎには空腹で目が覚めた彼女は、食堂に向かうことにしたのだが、その途中でミケに遭遇し……逃げた。
エリはミケが昔から苦手だ。
ミケは初対面の人の匂いを嗅いでは、鼻で笑う癖がある。
エリもミケに初めてあった時、例外なく匂いを嗅がれたのだが、それがきっかけでミケ恐怖症になったようだ。
「はぁ…はぁっ!びっくりした。」
壁に手を付き呼吸を整える。
「ここに入ってからずっと会ってなかったから忘れてたけど、そうだ、ここにはミケがいるんだ…。」
ミケには悪いが、今後できる限り会いたくないものだ。
心臓に悪い。
食堂のドアを開けると、居残り組の何人かが昼食をとっていた。
「エリ。君も居残りだったのか。」
「ナナバ兄さん。」
「ちょうどお昼を作ったところだ。食べるかい?」
「食べるーっ!」
入ってすぐに出会ったナナバに昼食をごちそうになることにした。
「今日は素直なんだね。」
美味しそうにご飯を食べているエリにナナバが話しかける。
「ん?あー、今ほとんど人いないし。休みだし。」
「いつもそんな感じで接してくれていいのに。」
「やーだね。特別扱いだと思われたくない。」
「なるほど。でもその様子じゃ、リヴァイやエルヴィンがうるさいだろう?」
「特にリヴァイね!この間の壁外調査の時なんかさ〜!」
「…俺がなんだ。」
2人でご飯を食べながら、近況について話し合っているとリヴァイが入ってきた。
「やぁリヴァイ。君も食べる?」
「あぁ、もらう。」
了解。とナナバがリヴァイの分の食事を用意しに行った。
エリがナナバの後ろ姿を目で追っていると、顔をしかめたリヴァイが目に入った。
エリは寝起きの格好で部屋から出てきたため、上はタンクトップ以外何も着ていない。
リヴァイはそれが何故だか気に入らなかった。
「……。」
「なに?うわっ!」
リヴァイは自分の羽織っていたカーディガンを脱ぎ、エリの顔面に投げた。
「着てろ。はしたない。」
「は?」
エリはちゃんと意味を理解できなかったものの、これ以上騒ぐとうるさいので大人しくリヴァイのカーディガンを着ることにした。
それをリヴァイはしっかりと確認し、エリの横に座る。
「……ねぇ、あっちで食べなよ。」
「うるせぇ、寄れ。」
そのあと戻ってきたナナバが、エリがリヴァイのカーディガンを羽織っているのを見て、こっそり笑ったのは言うまでもない。