夕陽、見上げて
□第1話―843年―
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ガバッ!!
「はあっ!はぁ…はっ……はぁ………。」
胸元の服を握りしめる。
なかなか呼吸が整わない。
「はぁ…あっ……」
横を見れば雨が打ち付けられている窓。
(こりゃ相当降ってるな…)
冷静に考えるが、今が夢か現かも判断が付いてない。
フラフラとベッドから降りて部屋を出た。
相当汗をかいたようだ。
雨によって一段と気温の下がった室外に出れば、汗で塗れた服が冷え、体温が一気に下がる。
少し青ざめた顔が、より青身を増した。
そんな自分の状態にすらも気づかず向かったのは食堂。
力の入らない腕でなんとか扉を開き、手洗い場へと向かう。
少し強めに蛇口を捻れば、冷え切った水が勢いよく飛び出した。
早く頭をはっきりさせたくて、蛇口から直接水を体内に流し込む。
あまり効果が得られず、今度は腰を折って頭からその水をかぶった。
冷たい水が髪の毛の間を走り、顔にながれ、排水溝へと吸い込まれていった。
水の流れをしばし見つめると、少し頭がはっきりしてくる。
水を止めて顔を上げる。
窓ガラスに映るのは、21歳の自分。
これは現実だということようやく認識でき、シンクに手を突いて、大きく息を吐いた。