夕陽、見上げて
□第2話
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「にしても、やっぱさすがのジェシカ様ねっ!エリを起こせるのはあなたくらいよ。訓練兵時代からの仲ってだけあるわね!」
「たいしたことないよ?この子を起こしたいのならもう暴力しかないんだから。」
調査兵団に配属になって半年ほど経った。
それぞれ班に配属され、今は明後日の壁外調査に向けての訓練の日々が続いている。
ぺトラとジェシカは同期でルームメイトだ。
ジェシカは訓練兵の時からのルームメイトで、エリの生活習慣を一番知っている人物。
同期の人間には、「エリを起こせる唯一の人間」として名が通っている。
ぺトラは気が利き、他人をほっておけないタイプの人間。
ルームメイトになってからというもの、まるで妻のようにエリに世話を焼いている。
もう一人、この部屋に割り当てられていた兵士がいたが、その兵士は3か月前の壁外調査で死んだ。
「エリ!着替えれたら、食堂に行くよっ!」
「へーい、へい。だー、ちょっと引っ張んないでーっ!私は君たちみたいにキャピキャピな10代じゃないんだよーっ!」
とはいってもまだ21歳であるエリが訓練兵団に入団したのは、彼女が18歳の時。
一般的に12歳から15歳の段階で訓練兵団入りをすることが多い中、エリは遅れての入団となった。
初めのころはこの年の差によって周りは苦労したようだったが、本人は何の気にもしなかった。
そのおかげか、彼女の飾り気のない性格のおかげか、いつの間にか同期でエリを知らないものはいないほどの好かれようだ。
特にぺトラはエリを自分の姉のように慕っている。
周りには夫婦のようにしか見られていないのだが……。
「あっ!エリ―っ!おはよー。」
「「ハンジ班長っ!おはようございますっ!!」」
ぺトラとジェシカがびしっと敬礼をする。
「…ハンジ、あんたね。」
廊下の曲がり角で出くわしたのは、最近班長になったハンジ。
同期などではないが、同い年であることや昔からの馴染みもあって、所構わずエリにちょっかいをかけてくる。
そんなハンジをよく思わないエリ。
ハンジの首根っこをつかみ、壁際で説教する。
「あんたね。何回も言ってるけど、皆の前で馴れ馴れしく接するのはやめなさいって!」
「えー!なんでぇ。私、エリのこと大好きなのにーっ!」
「あんた班長でしょ!私、新兵。あんた先輩!私、新兵。わかる?私が同期の中で気まずくなったらどうすんのさっ!」
気まずいなんて言いながらも、同期から何でハンジと仲がいいのかと聞かれたときに答えるのが面倒くさいだけである。
「わかった?2人だけの時にいーーーっぱい構ってあげるから、他の人の前ではいい子にするんだよっ!」
「ホントっ!じゃあ、私おとなしくしてるー。またね、エリ―!」
ハンジが喜びそうな単語を丁寧に丁寧に選びながら話すと、ハンジは納得してくれたようだ。
だが、ハンジがエリに向かってぶんぶんと手を振る姿は、あまりにもこの廊下で目立ちすぎている。
(……あいつ、確信犯だ。)