夕陽、見上げて
□第7話
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「はー、さっぱりっ!」
「おーい!ぺトラ。」
翌日、少し早めに訓練を切り上げられたぺトラは、蛇口で土のついた顔を洗い流していた。
すると、今日書類業務をしていたジェシカが兵舎から歩いてきた。
「ジェシカ!今日は早めに終わったの。」
「ちょうど部屋から見てたよ。」
これ飲む?と、ジェシカが差し出してくれた水を飲みながら、ぺトラはあることを思い出した。
「ねぇ、ジェシカ。兵長の班の訓練は見れた?」
「…そういえば、一度も見たことないな。」
「どこでやってるんだろう…。」
しばらく2人で考えていると、2人の目が合った。
どうやら考えてることは同じらしい。
「「よし、見に行こう!!」」
先輩から聞き出した情報によると、エルヴィン班はもう一つの訓練場でいつも訓練を行うらしい。
その場所を確認して2人で向かうが、気持ちが急いていつの間にか2人共走りだしていた。
「ここだね。」
「あ、いたっ!」
そこには、対人格闘の訓練をしているエルヴィン班がいた。
2人ずつでペアを組んでいるようで、その中に見つけたエリは男性兵士と組んでいた。
エリは立体起動訓練に次いで、対人格闘訓練が得意だった。
訓練兵の時やった初めての対人格闘訓練で、模擬実践を教官が見せてくれたが、その時たまたま相手役として指名されたエリが教官を倒してしまったなんてことがあった。
それを思い出した2人は、お気の毒に。と思わずにいられなかったのだが…。
ならず者役としてとびかかるエリを、先輩兵士はいとも簡単にかわしてしまった。
それどころか背中を取られ、技を掛けられている。
「うそ!エリが?」
「マジで?!」
よく見ると、エリはもうすでに身体中に新たな傷を作っていた。
「エリ!さっさと立てっ!!」
「――っ。」
先ほど技を掛けられた肩をかばいながら、エリがふらふらと立ち上がる。
「お前がトップクラスなのは立体起動だけか?主席の名が泣いてるぞ!」
先輩兵士が鎌をかける。
「――くっそ。」
再びエリが飛び掛かるも、またはじき飛ばされて地面に頭から突っ込んだ。
頭を強く打ちつけたようで、エリはなかなか起き上がらない。
「すまん!ちょっと本気になった。」
慌てて先輩兵士が駆け寄る。
「――もらったぁ。」
うずくまっていたエリが、先輩兵士の頭めがけて足を振り上げる。
「…せこい。」
「うん。」
思わずつぶやいたジェシカに、ぺトラが返事をする。
少し遅れたものの顔の真横でエリの足を受け止め、コロンっとエリをひっくり返してしまった。
「…おまえ、それはないだろ。」
「……奇行種っす。」
先輩兵士が呆れて言うと、エリ自身もそう思っているのか、少し口を尖らせながら自分を奇行種だと言い出した。
そんなエリを、バカかっ!と先輩兵士が殴っていた。
「そりゃ…先輩と比べれば実力差があるのはわかるけど。」
「エリでもこうなの?」
「当たり前だ。兵団でもトップクラスの集団だぞ。」
「「!!!?」」
第3者の声がして、振り返るとそこにはリヴァイがいた。
「まだ終わってねーか。おい、お前ら。少し手伝え。」
あまりの驚きに呆けた顔をしている2人を見て、リヴァイが眉間にしわを寄せる。
「…さっさとしろ。」
「「は!ハイっ」」