夕陽、見上げて

□第14話(前編)―845年―
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あれから少し時が経ち、845年。









少しずつ、変化が訪れ始める…。















【第14話(前編)―845年―】
















「――よしっと。」


「毎度思うが、なぜ俺の部屋で染める。」



リヴァイの目線の先には、せっせと髪を染めるエリ。







「自分の部屋でやったら、染めてるってバレるでしょ。」


「一般兵で女のお前が、分隊長で男の部屋に出入りしていることの方が、よっぽど怪しいと思うが。」


「そんなのいくらでも理由が付くじゃん!『兵長の命で分隊長に書類をお持ちいたしましたっ!』とかってね。」




なんて上司の命令に忠実な部下なんでしょうっ!と胸を張っているエリだが、それに理由がつけられるなら、それこそ髪を染める理由にもいくらでも理由がつけられるのではないか。










「そろそろ染めるのもやめたらどうだ。」


「…リヴァイ、なんかあったの?最近、今までに増して口うるさい。」





ピクシスとの会話以来、エリを想う気持ちを自覚したリヴァイ。


今までじっと見守ってきた場面でも、彼女のためにと口を出すことが多くなっていた。





彼女が事件から9年経った今でも髪を染めるのは、今でも自分が東洋人であることを憎んでいるからだろう。


自分に不幸をもたらしたその容姿を、血を、彼女は自分自身で否定し続けているのだ。






始まりをたどれば、エリの髪を染めさせたのは他でもないリヴァイだったが、これではいつまでたってもエリが根本的な問題を解決することができないままだ。



リヴァイは何とかして、彼女の心を自由にしてやりたかった。




それに、リヴァイは彼女の本来の姿をもう一度見たいと思っていた。



彼女が本来の姿に戻った時こそ、本当に彼女が苦しみから解放された時であり、そこからようやく“エリ・アクレス”としての人生が歩める。





それだけではなく、エリが髪を染める前の姿は、当時若干14歳だったにもかかわらず、東洋人独特の美しさを放っていた。



彼女が20代となった今、きっとその姿には目を見張るものがあるだろう。













その姿が見られる日は、いつか来るのだろうか…。
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