夕陽、見上げて
□第14話(後編)―845年―
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「きゃーーーーっっ!!」
「エリっ!あんた居るなら言ってよねっ!!!」
「え?」
【第14話(後編)―845年−】
夕食を済ませて部屋に帰ってきたペトラとジェシカ。
灯りが付いてなかったので、誰もいないと思って部屋に入ると、そこには布団を被り床に座っているエリがいた。
「もうエリっ!脅かさないでよっ!!」
てっきりお化けかなんかの類だと思ってしまったペトラとジェシカが、冒頭のように悲鳴をあげたのだ。
「夕飯にも現れないから何してんのかと思ったら……。」
「ズズッ!……ごめん。」
「……エリ、風邪?」
先程まで泣いていたエリは、鼻水をすすり鼻声になっている。
ペトラがそれに気づき、エリへと手を伸ばす。
「ちょっと顔見せて。風邪なら医務室に行かないと。」
「いい。大丈夫。」
「……大丈夫ったってあんた、かなり声ヤバいよ。」
エリが被っている布団を剥ごうと、ペトラとジェシカが手を伸ばすが、エリは頑なにそれを拒否する。
それもそうだろう。
剥がれてしまえば、泣いてたことがバレてしまう。
なぜこの部屋に戻ってきてしまったのかと後悔したが、エリは無性にペトラとジェシカに会いたくなったのだ。
「こらエリっ!顔見せなさいっ!!」
「やーだーっ!」
「まったくこの子はしょうがないねぇ。」
「いたっ!」
駄々をこねるエリは、ジェシカが叩いて納めるのが当たり前になっていた。
今も普段通りそんな場面が繰り広げられ、エリはとうとう布団を剥がされた。
「………エリ。」
「…………。」
エリの顔を見て唖然とする2人に、エリは気まずくなって体育座りをして顔を隠した。
「え?泣いてる?」
「どうしたの?エリ、何かあったの??」
ペトラとジェシカは、エリの両脇に腰を落として何かあったのかと問う。
しかし、ペトラがそれ以上に無視しがたいものを見つけてしまった。
「エリ!あなたこの手どうしたの?」
「え?」
自分でも身に覚えがなかったエリは、顔を上げて自分の腕を確認する。
すると自分の両腕には、手形のような痣がしっかりと付いていた。
「あ……。」
そこで思い出す。
これはリヴァイにつけられたものだ。
「あんた、頬も腫れてるよ……。」
今度は、エリの顔を見て、ジェシカが言う。
今度は覚えがあった。
これもリヴァイによるものだ。
「エリ……、なにがあったの?」
さらに心配する気持ちを強める2人。
依然として何も言わないエリに、ジェシカが1つの答えを出してしまう。
「あんたもしかして……。」
「え?!」
両肩をがっしり捕まれて、揺さぶられる。
驚いたエリは、されるがままにジェシカと向かい合う。
「誰だっ!?」
「ちょっと、ジェシカどうしたの?」
理解できないペトラが、驚いてエリとジェシカの間に入ろうとする。
「誰にやられたっ?!」
「え、えっ?!どうしたの?ジェシカ?!」
「許さないっ!」
「ひっ!!!」
ようやく覚醒したエリがジェシカに問いかけるが、ジェシカはますます怒りを強めていく。
しかし、突然怒り出したジェシカに、エリとペトラはただただ唖然とする。
「誰だ!教えて、エリ!」
「へ?どうしちゃったんすか?ジェシカさん。」
「――っ!強がらなくていいんだっ!バカだなっ!」
ジェシカはそう言うと、エリを強く抱きしめた。
「ちょっ!ジェシカさんっ?!!」
「レイプされたんだろ?ごめんなっ!気づいてやれなくて。」
「…………は?」
「えっ?!嘘。そんな…。」
「とりあえず、団長に報告しよう!」
「違うでしょっ!まず医務室っ!!!」
「待て、待て、待て。」
どうやら壮大な勘違いをさせてしまったようだ。