夕陽、見上げて

□第15話
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――その日 人類は思い出した



ヤツらに支配されていた恐怖を…







鳥籠の中に囚われていた屈辱を……―――















「総員、戦闘用意!!」



団長の声が森に響き、ついに作戦が決行される。

兵士たちの間に物々しい空気が漂い始めた。





「目標は1体だ!!必ず仕留めるぞ!!」


隊列の前方には15m級が1体。


そこにエルヴィンの声が響く。





「目標との距離400!!こちらに向かってきます!!」


「訓練通り5つに分かれろ!!囮は我々が引き受ける!!」







そう言うと団長の班は巨人に向かって進路を進める。


ほかの班は一斉に巨人を囲い込み始めた。





「目標距離100!!」


「全攻撃班!!立体機動に移れ!!」



兵士たちは一斉に空へ飛び上がる。



「全方向から同時に叩くぞ!!人類の力を!!思い知れッッ!!」















【第15話】















あれから数時間後。


エリは気を失っていたようだ。


目が覚めたらそこは壁外ではなかった。







なんだか身体がものすごくだるい気がするが、状況を確認したくてとりあえず身体を起こす。


「う……――っ!!」



全身が激しく痛み、エリはベッドに逆戻りとなった。



(どうなってんの……。)








目覚めるまでの記憶を必死にたどるが、なかなか思い出せない。


状況的に、負傷して連れて帰られたのだろうが、なぜ負傷したのかも思い出せないでいた。





「うっ……。」



とりあえず、最低限の痛みだけで動かせる首を駆使して、周りから情報を得ようとする。



自分と同じように何人かの兵士がベッドに横たわっているが、いずれも軽傷のようだ。



重症患者の集められる病室ではないことに、とりあえず安心する。










「エリ?!」


「目が覚めた?よかった。」




ペトラとジェシカが部屋に入ってきた。


彼女たちは怪我していないようで、白衣を着ていることから、手当てを手伝っていることがわかった。







「2人とも、私どうして……。」


2人に会えたことが嬉しくて、無理矢理身体を起こす。




「ダメだってばっ!」


「まだ起きれないでしょっ!」



それを見て、急いで駆け寄った2人にもたれながら、ようやく身体を起こした。









「全身を強く打ち付けたから、今日は安静にしていて。」


「全然思い出せない…。作戦は?」


「失敗だ。」


「失敗……?被害は?」


「「…………。」」










2人の空気が重くなる。



「たくさん、死んだわ。陣形の内側から突然巨人が現れたの。
陣形の外側にいた私達には全然分からなくて……。」









ペトラが涙を貯めながら説明をする。


エリは額に手を当てて、必死に記憶をたどる。





「森の中が急にざわつき始めて、そうこうしてる間に撤退命令がでてさ。森からは血まみれの先輩達が出てきて……。
兵長に担がれてるあんた見かけてゾっとしたよ。」


「森が、すごく静かで……、どうも落ち着かなくて……。そうか、あの後……。」















ジェシカに補足して説明をしてもらい、ようやく記憶の端をつかんだ。
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