夕陽、見上げて
□第16話
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もし
神というものが存在するなら
「祈る」というのはこういう時にするものだろうか
もし
神というものが存在するなら
なぜ「人」を生み出したのだろうか
この世界はあまりにも残酷だ。
【第16話】
「な、に…?」
「壁が壊された、だと…。」
絶望に、絶望が重なる。
兵士たちは悲鳴を上げ、取り乱し始めた。
壁外調査で巨人に対峙する免疫があったとしても、壁が壊されることなど予想だにしていなかった兵士たちは、大きなパニックに飲まれていく。
そもそも、本日行った壁外調査で巨人から恐怖を思い知らされた彼らに、心の余裕など残されていなかった。
「皆、静粛にっ!!!」
団長の声が、兵舎に響く。
兵士たちが集まっていた広場に、団長とエルヴィンが出てきた。
団長はすでに威厳を取り戻しており、あっという間に混乱していた兵士たちを静めた。
「皆も聞いたと思うが、壁が破壊されたという報告が入った。これより、緊急対策本部が設置される。
それぞれの配備を20分後に発表っ!
それまでに立体機動装置の整備、および戦闘準備を整えよっ!!」
「「「「……。」」」」
誰もがパニックに陥っていたため、指示が頭に入らないようだ。
広場は依然静寂に包まれたまま、兵士たちは微動だにしない。
「皆…、心臓を捧げよっ!!!!」
「「「「――っ、はっ!!!」」」」
団長の一声によって、兵士たちがしっかりと敬礼で答えた。
ようやく動き出した兵士たちに、詳しい指示がエルヴィンから飛ぶ。
「現在治療に回っている者、また怪我の大小にかかわらず負傷している者はこの作戦を除外するっ!各自、医務室で待機っ!!
それ以外は、20分後にここへ集合せよっ!」
慌ただしく兵士たちが行き交う中、リヴァイはエリの手を引いていく。
「エリ、お前は医務室に…。」
「行くよ。」
安静を告げられているエリは医務室で待機となるが、エリがリヴァイの手を振り払いそれに抗う。
リヴァイは目を細めてエリを睨みつけるが、エリの決意は変わらない。
「私も行く。」
「チッ!…無駄死にはするな。」
観念したリヴァイは、またエリの手を引いて戦闘準備に向かった。