夕陽、見上げて
□第16話
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「エルヴィン。私も出るから。」
「……。」
20分後。
準備を整えたエリは、広場にいた。
目の前にはエルヴィンがいて、エリをじっと見据えている。
「何と言われようと出る。」
「はぁ…、そう言うと思って作戦に組んである。お前は精鋭班だ、リヴァイが指揮を執る。」
「了解!……ありがとう。」
「気をつけなさい。」
ほんの一瞬、エルヴィンがエリの頭に手を置く。
その暖かさを心に刻んで、エリはリヴァイの元に向かった。
「リヴァイっ!」
「遅いっ!早くしろ。」
そこにはすでに、ハンジとミケ、ナナバと他複数名の兵士が集まっていた。
「最初の報告によると、破られたのはシガンシナ区にある開閉門だ。まだウォール・マリアは突破されていない。
俺の班とミケ班で別れ、全力でウォール・マリアを死守する。」
ウォール・マリアが破られていないということが、唯一の救いだ。
死守できなければ、人類の活動領域がウォール・ローゼまで後退してしまうことを考えると、絶対に失敗は許されない。
「エリっ!」
「ペトラ、ジェシカ……。」
2人は兵舎から出陣しようとするエリを見ていた。
エリも2人の姿を見つめる。
治療に回っている2人は、兵団に残ることになる。
また、この兵団はウォール・マリアとウォール・ローゼの丁度真ん中辺りにあるため、万が一にも壁を突破されれば、避難要員として担ぎ出されるのだ。
下手をすれば、もう二度と会うことができないかもしれない。
しかし、今はシガンシナ区へ急がねばならない。
葛藤している様子のエリを、リヴァイが見かけた。
「エリ……。」
「――っ!わかってる、行こう。」
「……5分だ。」
「え?」
「5分以内に隊列に追いつけ。それ以上は待たねぇ。」
「……ありがとう。」
エリは踵を返して2人の元へと走り出した。
そのエリを見て2人も走り出し、交わる場所で3人は堅く抱き合った。
「エリ……、行くのね。」
「うん。」
「死んだら許さないよ…。」
「絶対帰ってくる。約束する。」
「「エリ、大好き。」」
「私も……。」
それだけ言うと、エリは2人から身体を離して走り出す。
「マリーっ!!」
エリが名前を呼ぶと、大人しく駆け寄ってきた自分の馬に、走る勢いそのままに飛び乗った。
2人は名残惜しそうに、その後ろ姿が他の兵士たちで見えなくなるまで見送った。
「エリ……。」
「大丈夫。あの子が約束を破ったことある?」
「そうよね……。私達も頑張らなきゃっ!!」
そうして、2人は持ち場へと戻っていった。