夕陽、見上げて

□第21話
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「あーお腹すいたっ!」


「さて、どこに行こうか。」


「…待たせた。」





ハンジとエルヴィン、そしてミケが兵舎の前に立っていた。



そこへ遅れてやってきたリヴァイが加わる。





「あれ?エリは?」


「あいつは来ない。」


「また資料室か?」


「あぁ。」















【第21話】















「ふぅ…。」




自分の資料を見つけて以来、エリは時間を見つけては資料室を訪れていた。



自分の家族を殺した犯人が生きているという恐怖を紛らわすように、事件に関連する資料をとにかく漁っていった。







「うーん…。」



長時間同じ姿勢だったことにより凝り固まった身体を、
両腕を天井に向けて思いきり伸ばしてほぐした後、ゆっくりと息を吐く。





エリは資料を漁っていく中で、自分たちの住んでいた場所が父の友人によって提供されていたことを思い出した。



その人物についての資料を探したが、如何せん秘密裏に匿われていただけに答えにたどり着くことはできなかった。







「でも、なんでバレたんだろう。」



これだけ調べても何の情報も現れないというのに、なぜ人売り達に自分たちの存在が知れたのだろうか。



両親から聞いていた話から考えると、
両親が結ばれてからの3年とエリが生まれてからの14年間は、
あの山奥にある家が誰かに気づかれることがなかったというのに…。







「この“匿名”ってのも怪しい…。」



憲兵に通報したという匿名の人物にも疑問が募る。




調べれば調べるほどに謎が浮かんできて、エリの頭はパンクしそうだった。







資料の上に置いていた手はそのままに、背もたれに身体を預ける。





すると、あの日母親からもらった左腕のブレスレットが目に入り、エリはそれを右手で大事そうに触った。




「…お母さん。」



もらってから10年以上経ている割には綺麗に保たれており、
エリは昔から家族を思い出したりつらいことがあったりすると、このブレスレットに触れる。



それは、家族を思い出せるエリの唯一の拠り所だったのだ。
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