夕陽、見上げて

□第23話
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「よう、エリっ!」


「うわっ!!」


「わー!何やってんですか、分隊長っ!!」









穏やかな昼下がり。




それとは裏腹に、食堂に騒がしさが響いた。















【第23話】















「リヴァイ、あれはなんだ?」


「……最近ずっとあの調子だ。」





久々に食堂で昼食をとっていたエルヴィンは、我が目を疑った。



同期と思われる兵士がエリに声を掛けたところまではよかったのだが、
後ろから声を掛けられたエリは必要以上に身体をビクつかせて、持っていた食事を手放したのだ。










「トラウマになっているのではないか?」





一緒に食事を取っていたミケがリヴァイに問いかける。



リヴァイはエリの様子を目で追っていた。




床に散乱した食器や食事を片付けようと身を屈めようとしたが周りの兵士たちに制され、
綺麗になっていく床を、頭を掻きながら気まずそうに見ていた。










「あの状態がもう少し続くなら、考えてやったほうがよさそうだな。」


「あぁ…。」





















「それはトラウマじゃないかな?」


「トラウマ?」





エリは定期検診のために、専門医の診療所を訪ねていた。







「ただでさえ恐怖を感じていた犯人に、さらに恐怖を植え付けられただろう?
トラウマになってもおかしくないんじゃないかな?」


「う〜ん。」







一刻も早く過去を脱したかったエリは、事件の事を専門医に話していた。



そのおかげで、ここ最近の自分の異変もあっという間に原因を割り出してくれた。





言われてみれば、男の手や舌が自分の身体を這った感覚がしみついて消えず、時々気分が悪くなって仕方がなくなる。









「エリさんは、大切な…恋人とかいないのかい?」


「いないですよ、そんなの。」


「そっか。同じような症状の患者さんが、恋人の存在が克服してくれたって言ってたから聞いてみたんだけどね。」


「ふ〜ん。」










何とも内容に答えたエリだったが、頭の中では専門医の話を聞いていてちらっと浮かんだリヴァイを必死に慌ててかき消していた。




最近、エリの頭にはたびたびリヴァイの事が浮かぶようになっていた。






「はぁー。」





これもエリにとってわけの分からない異変であったが、何だかこのことは専門医に話すことはためらわれて、エリは深いため息を漏らしてうなだれた。
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