夕陽、見上げて
□第24話(前編)
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エリは荒々しくエルヴィンの執務室をノックし返事を待たずにドアを開けると、
ズンズンと部屋を横切りドサッとソファに腰を落とした。
エルヴィン、そして打ち合わせをしていたミケがどうしたことかと驚いてエリを目で追っていた。
「あの分からず屋っ!!」
「……何があったんだ?」
珍しく怒りを露わにしているエリに問いかける。
「もう1人で行く。」
「どこへだい?」
「地下街。」
「………それはやめておいた方がいいんじゃないか?」
「エリ、昨日許可を出した時にも言ったが、リヴァイが同伴しないなら許可はしないよ。」
エリは昨日エルヴィンに地下街行きの許可をもらった時のことを思い出す。
「でもこれじゃあ……全然気が晴れないよ。」
しょんぼりと口をとがらせて床を見つめる エリを見ているその姿は気の毒で何とかしてやりたかったが、
リヴァイの同伴という第一条件は取り下げることはできない。
恐らく他のものを付けたとしても、エリ自身も納得しないだろう。
「エリ……。」
「分かってる!……心配してもらってるのは、ちゃんと分かってる。」
ミケがソファに座っているエリに歩み寄りながら声をかけるとミケが言わんとすることを察したのか、エリは慌てて口を開いた。
「地下街へ行かずに出来ることはないのか?」
「資料という資料はもう全部読んじゃった。」
「先日捕まえた男に話を聞きに行くのはどうだい?」
「リヴァイが絶対に会うなって。」
「「……。」」
何につけても立ちはだかってくるリヴァイの壁が分厚すぎて、3人はどうしたものかとため息を吐く。
行き詰ったアドバイスをごまかすように、ミケがエリの頭に手を置いて言った。
「お前はリヴァイに忠実だな。」
「忠実って……、ただ刃向かったら恐ろしいだけ。」
「私の命令は時に破るのにかい?」
壁外調査で何度君に命令を破られたことかとエルヴィンが苦笑しながら言うと、
実践の中で本能が指示を無視することはよくあることだし第一リヴァイとは恐ろしさの種類が違うとエリが答えたので、
エルヴィンはまたおかしくなって苦笑した。
「はぁ……、訓練行かなきゃ。」
ふと時計を見ればもう昼休みも終わる時間だった。
解決策を得られないまま渋々立ち上がってフラフラ部屋を出ていったエリを見送りながら、エルヴィンは1つの不安を抱く。
「1人で行ったりしなければいいんだが……。」
「それは大丈夫だろう。俺たちに迷惑をかけることを一番嫌がる。」
「そうだな。」