夕陽、見上げて
□第24話(後編)
1ページ/5ページ
――11年前。
「アストン。本当に、君には感謝してもしきれないよ。」
「何を言うんだ、ケント。私こそ君と出会っていなければ今生きていなかったよ。」
中年の男2人が趣のあるバーで酒を酌み交わしていた。
2人はこのバーの常連であり、酒を飲み語らうたびにこの会話をしていたので、バーの店主はまた始まったかと小さく苦笑する。
「何があっても、私は君の味方だよ。」
2人は硬い友情で結ばれていた。
【第24話(後編)】
貴族出身であったアストンは自らの社会的地位に溺れることの無い活発な男で、自ら事業を立ち上げ社会貢献を志す彼は多くのものに慕われていた。
しかし貴族という小さなコミュニティーの中には、彼を良しとしない者もいた。
「なぜだ。このままでは…このままでは破産してしまう!」
「アストン!落ち着くんだ。大丈夫、きっと何とかなる。」
将来性を見込んで投資契約をした会社が資金と共に忽然と姿を消した。
契約した会社は倒産の危機にあり、
それでも会社の将来性と何より社長の熱意を信じたアストンは会社の立て直しのためにかなりの額を投資した。
もちろん多額の金を動かすことに不安はあったが、
それでも彼の胸は希望に満ち溢れており、会社の金を可能な限り注ぎ込んで出資を行った。
この金が2度と回収できないとなると、彼は自分の財産を持ってその穴を埋めなければならない。
さらに、投資が失敗したと聞いた顧客たちが社長であるアストンの辞任を要求してきた。
財産を失い社長というポストを失えば、アストンの社会的地位も地に落ちるだろう。
「嵌められたのか…。一体誰に!!?」
全ては彼を気に入らない一部の貴族たちが図ったことだった。
契約を交わした会社も社長辞任を求める顧客たちもすべてがその策のうちであり、活発なアストンが地に落ちていく様子を笑うためだ。
しかし、これは決して珍しいことではなく、悪趣味な者たちはゲームのようにこういった遊びを繰り返していたのだ。