夕陽、見上げて
□エピローグ―848年―
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『ほら、エリ!来てごらん?夕陽がきれいだよ!』
『ん〜。』
『どうしたの?オレンジ色で綺麗だよ。』
『でもお日様どっかに連れてかれちゃうんだよ。真っ暗になっちゃう…だから嫌いー!』
『あら。私は夕陽好きよ?だって夕陽が見えるってことは、お父さんがもう少しで帰って来てくれるってことだもの。』
『ん〜??』
『エリにはまだ早かったかな?』
「ん…。」
苦笑しながら自分を見ていた母親の顔が消えた。
目を瞬かせてぼんやりする視界を直すと、
先ほど広がっていたオレンジ色の世界ではなく白い光の差すいつもの自分の部屋が見えた。
「……夢か。」
【epilogue―848年―】
「エリって夕陽好きだよね。」
「え?」
「だっていつも見てるじゃない?今も。」
(あれ…嫌いだったはずなのに。)
業務終わりに偶然中庭でぺトラと遭遇したエリは、夕陽を見上げながらおしゃべりをしていた。
ぺトラに言われた言葉に今朝方見た夢を思い出し、確かに夕陽が好きで普段からよく見ている自分を不思議に思う。
(なんでだろう…。)