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□あんぱんと私と先輩と
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『おはよー、千ちゃん』


「なまえちゃん!珍しく遅いから休みかと思ったわ!」


『平助くんと途中で会って話が盛り上がっちゃって…あはは』


「もう!なにやってるの!しっかりしなきゃ駄目じゃない!」


『うぅ…そうだよね…ごめんね千ちゃん。』


「そんな顔しないでなまえちゃん!私はなまえちゃんが休みじゃなくて良かったわ」



そう言って千ちゃんは優しく微笑んだ。



『ありがとう、千ちゃん!』



この子は私の親友の千ちゃん。

可愛くて優しくてとてもしっかりしている女の子。



「ほら、なまえちゃん。チャイムが鳴るわよ。」



それから間もなくして、授業開始のチャイムが鳴り、私はそっと自分の席に着いた。








――――――――――





放課後、私はほぼ毎日の日課になりつつある図書室に足を運んでいた。


『今日は何読もうかな…。』



何の本を読もうか迷っていた時、図書室の扉が開き、人が入ってきた。


私の学校の図書室は、昼休みなら来る生徒は結構いるけれど、放課後になると殆んど生徒が来ない。


そういうところも、私が図書室に来る理由の1つだ。



『珍しいな…。この時間に人が来るなんて。』



独り言のつもりで言ったその言葉は、しっかりと入ってきた人に届いていた。



「どうやら先客がいたようだな。」



私はその言葉に反応して、顔をあげた



『…斎藤…先輩…。』



目の前には、朝に会った風紀委員の斎藤先輩が立っていた。


「この時間に先客がいるとは珍しい。みょうじはいつもここにいるのか?」


『はい…。最近は毎日のようにいます。ここは…とても落ち着くんです。』



私がそう言うと先輩は、ここに座ってもいいだろうか。と私の目の前の席に目配せし、聞いてきた。


私は短く、はい。と言って、先輩が席に着くのを見ていた。



「…俺も、ここが気に入っている。みょうじが言っていたように、この時間は人が少ない故、とても静かだ。」



『そうですね。それに、この席は日当たりがとても良くて、つい居眠りしてしまいそうになります。』


「それはみょうじだけだと思うが…。」


『そんなことないですよ!ここはとても気持ちがいいんですよ!!』



私がこの場所について熱弁していると、斎藤先輩は、そうか。と微笑んでいた。






















「そろそろ下校時刻だな…みょうじ、一緒に帰ろう。」


『…!は、はい!!!』



私は図書室を出ると斎藤先輩と肩を並べて歩き出した――。






















 
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