陰陽師物語

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 燈台の灯りに照らされた洞窟の中で、闇へと誘う声が響く。

「蠢く獣。鳴く獣。闇へと誘え、悪しきものよ。埋める獣、泣く獣。闇へと誘え、悪しき者を」

 唄うように禍々しい言霊を繰り返す、褐色肌が特徴の法師。
 首から、人の頭蓋骨で出来た首飾りをかけている。
 頭に毛は生えておらず、額には脂汗が浮かんでいる。
 その法師を囲むように、黒い陽炎が踊っていた。
 唄に合わせて踊るように、ゆらゆらと。ゆらゆらと。

「蠢く獣。鳴く獣。埋める獣。泣く獣。ふるべゆらゆらと。ゆらゆらと」

 闇へと誘え獣達よ。
 悪しきものよ、闇へと誘え。
 ゆらゆらと、踊れ。
 鈴が揺れるように、ゆらゆらと。ゆらゆらと。

 黒い陽炎がゆらゆらと揺れて、徐々に法師の背後に移動し、一つになる。
 それを確認し、法師はにたりと口元を吊り上げた。

 後少し。後少しで、完成する。
 平安の都を、闇へと誘う獣が。

「蠢く獣。鳴く獣ーーーーっ!」

 耳の傍を、一筋の光が横切る。
 そして地面に光が刺さると、法師を囲むように赤い炎が噴き上がった。
 黒い陽炎が、炎に包まれる。
 この炎は、全てを焼く地獄の業火。

 これを召喚できるのは、ただ一人。
 法師は目をカッと開き、立ち上がると同時に、袂で炎を払う。
 炎に焼き消される、法師の獣達。
 ここまで準備して来た物が、全て消された。
 炎に囲まれながら、法師は怒りを爆発させ、声を上げて叫んだ。

「おのれ!晴明ーーーーっ!」

 法師の足元に刺さる矢が、炎によってかき消された。

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