ふりー!
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その日の帰り道。日直の仕事が終わり一人歩いていると、少し離れた先に見覚えのある背中があった。
『竜ヶ崎くん!』
「?あなたは…」
『えっと、2年の榮芽生です。今日は渚たちと見学させてもらったんだけど…』
「あぁ、あの時の…。どうりで見覚えがあると思いました」
メガネをくいっと持ち上げ竜ヶ崎くんはため息を吐いた。多分練習と渚の熱烈な勧誘に疲れてるんだろう。そうだ、とポーチから飴を取り出し渡すと不思議な顔をされた。
『あれ?いらない?』
「…いただきます。あなたは、彼みたいに勧誘してこないんですね」
『渚のことかな?やっぱり勧誘されてるんだね。まぁ私としても部員になってほしいな〜とは思ってるんだけどね』
「ぼくはもう陸上部に入ってますから」
『そうなんだよなぁ…。きっと竜ヶ崎くんは泳いでもかっこいいと思うんだけど』
「かっこ…!?…まったく、あなたたちは変な人たちですね」
はぁ、とまたため息。それからしばらく何もしゃべることなく歩いていると、「ぼくはこっちですので」と竜ヶ崎くんが口を開いた。結局あんまり話せなかったし勧誘という勧誘もできなかったなぁ。少し名残惜しいけど、疲れているだろうし今日はもう止めておこうと思う。
『うん、お疲れ様!また明日ね!』
「また見学に来るつもりですかあなたは…」
私は知らない。竜ヶ崎くんがこの後駅で渚に遭遇し再び熱烈な勧誘を受けるということを。