ふりー!

□6
2ページ/5ページ



私と真琴は今スイミングクラブに来ている。真琴からの電話の内容は、一緒にスイミングクラブを見に行かないか?というものだったのだ。

『真琴も知ってたんだね、いよいよ取り壊されちゃうって』
「今日の夕食の時に聞いたんだ。それで、なんとなく気になって…。急に誘ってごめん」
『ううん、私も気になってたんだ。もう一度見に来れてよかったよ。…それにしても、もうすぐ取り壊されるって、なんか実感ないなぁ』

苦笑いしながら真琴を見上げると、真琴は少し悲しそうな目でスイミングクラブを見ていた。何度も通ったスイミングクラブ。生徒でない私ですらこんな気持ちになるのだから、真琴はもっと寂しい気持ちになっているのかもしれない。ハルや渚はどうだろう?凛は、悲しむだろうか。物思いにふけっていると、背後から別の声が聞こえてきた。

「辛いよねぇ、思い出がこうやって形をなくしちゃうってのは。君たちも関係者か何かかい?…ま、時代には抗えないってことだな」

ピザ配達の格好をしたおじさんがそこにはいた。どこか見覚えのある顔だ。

「あっ!ひょっとして、笹部コーチ!?」
『笹部…?はっ!!思い出した!』

そうだ、笹部コーチだ。このスイミングクラブで何度か話した記憶があるし、いつもスパルタで教えているものだから私は最初怖がっていたんだ。でも話してみたらすごく気さくな人で、生徒でない私にすら泳ぎを教えてくれたんだった。

きょとんとした顔のコーチに自己紹介すると、彼ははっとした表情になった。それから懐かしい昔話やコーチが今ピザ屋のバイトをしている話などをした。相変わらず気さくで話しやすい人だ。

「はははっ!お前ら昔もずっと一緒にいてたけど、今でもそうなんだな。なんだ?付き合ってるのか?」
『えええ!?ち、ちちちがいます!!』
「そっそうですよ!俺たちはそんなんじゃ…」
「なんだそうなのかぁ!ははは」




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ